短編

□素直になれなくて
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その表情は、酷く悲しく切なそうな顔で傷ついているようだった。

いつもの彼なら、こんなに感情を顔に出すことなんてないのに・・・。

・・・そうか。

ほんの数分だけの沈黙が、あたしのは酷く長く感じられた。



「・・・もういいったい」

「え?!」

「あんたにとって・・・あたしはただの友達ってことやろう?」


ルビーの目が大きく開かれた。


「だったら、ハッキリあたしにそう言ってほしか!あたしが、無駄な期待をしてしまうったいっ」

「サファイア!!」

「ルビー、早くあたしを振って欲しいったい。やけん、あんたのこと吹っ切ることが出来んと」


視界がぼやけてきた。泣かないって決めてたのに・・・

やっぱり、笑うなんて出来んとよ。

大粒の涙が、あたしの頬を伝って落ちてゆく。

あたしはルビーに、これ以上こんな姿を見せるわけにもいかないから、家に帰ろうとした。

しかし、


「何処に行くんだい。サファイア」


ルビーにしっかりと腕を掴まれてしまい、帰ることができない。

あたしは、ルビーに背を向けたまま


「・・・家に帰るったい。」


と告げ、今度こそ帰ろうとしたが、ルビーがあたしの腕を掴んで離そうとはしない。


「・・・ルビー、どうしてあたしば引き止めると?」

「それはっ」

どうしてルビーはそんな、苦しそうな顔をするの?

・・・もう・・・

あたしは、待てないったい。

一瞬、腕を掴む力が緩くなったのを、あたしは見逃さなかった。

思いっきりその手を振りほどくと、あたしはそのまま秘密基地から出た。


「待ってサファイア!!僕はっ!!」

「聞きとうなか!!言い訳なんてっ!同情なんかせんでっ!!」
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