短編
□お願い
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ふらりと旅に出ていたゴールドが、ある日突然帰ってきた。
彼はいつも通りの笑顔で私の前に現れ、呑気にソファーでくつろいでいる。
その姿はボロボロで、傷が所々にある。
そんな彼を見て私はいつも悲しく思う。
お願いだから、これ以上ボロボロになるまで傷つかないでっ・・・
私はもうこれ以上、貴方の傷付く姿を見たくなんかないのっ
いつも貴方の帰りを待つ間、心配で心配で胸が張り裂けそうになる。
でも会うと素直になれないから、意地を張っちゃうの。
でもっ本当は・・・
「・・・クリス?」
私は俯いたままゴールドの目の前に立つ。
金色の瞳が私を不思議そうに見上げている。
「・・・おーい、どうしたんだよ。クリス?」
何を言っても黙り込んだままの私に痺れを切らしたのか、ゴールドは座っていたソファーから立ち上がった。
そして私の顔を覗き込む。
私は顔を見られたくなくて、ゴールドから顔を背けた。
「・・・クリス」
ふわりと私の体をスッポリと包み込む大きい腕。
ゴールドは私を優しく抱きしめていた。
「何があったのかは知んねーけど、俺はちゃんとココに居る。だから心配すんな」
ああ・・・彼はちゃんとココに居る・・・
自覚した途端、抑えていた涙が溢れ出してきた。
「っごーるどぉ・・・ごーるどぉっ」
泣きじゃくる私の背中を優しく摩りながら泣き止むのを待ってくれた。
「お願いだからココに居てよっ」
もう貴方の傷ついた所を見たくないの・・・
お願い
だからどうか私の隣で笑っていて欲しいのです。