短編
□意地っ張りな2人
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チョコレートの準備は完璧。
ラッピングもバッチリ。
後は相手に渡すだけ。
もちろんシルバー。
それに先輩、後輩たちには直ぐに渡せた。
でも、本当に渡したい相手には、まだ渡せていない。
本当は素直に渡そうとしたわ。
でも彼が、他の子から沢山貰ってるのを偶然見てしまった。
その時、私のチョコもあの中の一つでしか無いんだって思ったら、なんだか悲しくなってきたの。
だから彼にはあげるのを諦めることにした。
それなのに・・・
放課後になって、帰ろうとしていた私は彼に呼び止められた。
「なぁ、クリス」
「何よ」
目の前に差し出されたのは、私より一回り大きな手。
「チョコ。俺の分は無いのかよっ」
「・・・沢山貰ってるんだから、私のはいらないでしょ」
素っ気無い言葉。
きっと目の前にいる彼は呆れてると思う。
自分でも可愛げがないと思うし・・・
どうしてこんな性格なんだろう。
自分が嫌になってくる。
少し顔を上げると、苦しそうに顔を歪ませる彼の姿。
「んだよ・・・浮かれてたのは俺だけかよっ!!お前に貰えるんじゃねぇかって、期待してた俺が馬鹿みてぇっ」
泣きそうな顔で訴えて来る彼。
「何よ・・・っ」
泣きたいのはコッチの方なのにっ!
この時、私の中で抑えていた何かが弾けた。
「何よっ!本当は私だってあなたにチョコ渡したくて、どんな反応してくれるかなって楽しみにしてた!!なのにっ!」
嗚呼、どうしよう。
今の私、きっと凄く情けない顔をしているわ。
視界がぼやけてきて、私は咄嗟に下唇を強く噛んだ。
涙が溢れ落ちてしまわないように。
(これ以上此処に居たら、きっと泣いてしまうっ)
そう察した私は、彼に表情が見られないようにクルリと後ろを向き、そのまま走った。
こう見えても足には自信がある方だから、追い付かれないように、必死に彼の傍から逃げる。
そう思ったのに・・・