企画作品

□そうだ!○○へ行こう!!
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「なぁ、旅をしようぜ」
発端は、風雅のこの一言だった。
「どうぞ一人でご勝手に」
亜梨亜はノートから目も放さずにそう言い放ち、神楽に至っては返事すら返さない。
花音は頭から馬鹿にして笑い転げている。
「きゃはは。旅ですって。『フーテンの…』とかそういう奴?風ちゃんにピッタリじゃない」
「なんで急にそんな事言い出したの?」
「だってGWだぜ!?」
半ばお愛想で問掛けてくれた律呂の言葉に食い付き、風雅は叫んだ。
「周りの奴らは皆、キャンプだの里帰りだの、海外に行ってる奴もいるんだぜ。地元に残ってる奴なんてほとんどいないじゃんか。俺もどっか行きたいっ、遊びたいんだよぉぉっ!」
ふぅ、と大きな溜息を吐いて、亜梨亜が風雅の方へ向き直る。
「あんた宿題終わったの?」
「いんや、まだだ。GWは宿題の為にあるんじゃねぇもん」
「学生は勉強する為にいるのよっ。まずは宿題済ませなさい!じゃなきゃ絶対やらないまま学校行く事になるでしょ!?」
「えぇ?なんでそんな話になるんだよ。旅行はぁ?」
「ふん、あんたが今日中に宿題全部終らせたら考えてあげるわよ」
「やだぁ、絶っ対無理じゃない。風ちゃん残念だったわね」
「決めつけるなよ、俺はやるぜ。亜梨亜!その言葉忘れんなよ!?」
そうたんかをきると、風雅は律呂を引っ張って子供部屋へと姿を消した。
「これで今日一日は静かになるわね」
亜梨亜はスッキリした顔で手元のノート(びっしり書き込まれた小遣い帳)に再び目を向けた。
「でも、連れて行かれた律ちゃんの一日も潰れちゃうわねぇ」
「平和の前に犠牲はつきものよ」
動じず切り捨てる亜梨亜の発言に、神楽は密かに薄く笑っていた。
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