企画作品

□チョコレートを作ろう!
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――side red――
神崎茜は今、ひどく悩んでいた。
今迄長く幼馴染だった希海葵と恋人同士になれて、初めてのバレンタインが明日に迫っている。
もう、渡す時に
「義理チョコだよ」
なんて誤魔化す必要もないし、こっそりではなく、人前で堂々と渡して冷やかされたって大丈夫。
いつも恥かしくって出来なかった、手作りというものに挑戦してみようと、昨日、デパートの特設フロアで、色々と買い込んだ。
その材料を台所に広げ、よし!と腕捲りした所で、そのまま固まってしまった。
チョコって、どうやって作るの…?
手には板チョコ。
一応、製菓用らしいが、とにかく量が欲しいと、透明な袋に入れられたお徳用のセール品を買ってしまっているので、説明書きもない。
だって、チョコって…これ、もうチョコだよね?
これって、完成品じゃないの?
茜の頭の中は?でいっぱいだ。
更に茜の?は広がる。
チョコって何で出来てるの?
カカオだったっけ?
カカオ…豆?
それって、どこで採れるんだっけ…?
そこまで考えて、茜は首を振った。
カカオからなんて、そんな本格的な事、出来る訳無い。
他の女の子も、きっとそんな事、してない。
だって、
「手作りチョコの材料集める為に、豆採りしてたの」
なんて言ってる子、見た事ない。
じゃあ、やっぱり、この製菓用のチョコをどうにかするんだろう。
でも、どうするの?
いつもだったらこういう時、葵に頼りきっていたが、今回ばかりは頼れない。
それじゃあ意味がない。
それに、葵はきっと、いとも簡単にチョコを仕上げてしまうだろう。
茜には任せず、一人で。
それも癪だ。
困った挙句、茜は携帯電話を握り締めた。
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