単品作品
□桜の咲く頃に
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私は校舎です。
何十年も小さな島の子供達を見守り続けてきた私は、今時珍しい古びた木造で、その年月を表す様に黒ずんでいます。
これ程古い建物は、この島では私位なもので、島の顔と言ってもよいでしょう。
そんな私ですが、この度役目を終える事になりました。
島の過疎化が進み、廃校になるのです。
時の流れとは、悲しいものです。
――歌声が、聴こえますね。
今日は四人の生徒達の卒業式なのです。
私にとって、最後のセレモニー。
彼等の晴れ姿を目にしかと焼き付けて、深い満足と共に幕引きと致しましょう。
この歌、最後の歌詞が良いですね。
いつ聞いても心に染み入ります。
私も忘れませんよ、今日の事は。
いつまでも。