BLEACHのお部屋

□戦装束
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          『戦装束』(後編)









―怖がるようになったのはいつだっただろか?





長い沈黙。
無理もない。ずばり核心なのだから。

会いたいのに会いたくない。
反比例している心。

なるべく普通にしていたつもりだったが、乱菊にはわかっていた。
それはつい最近こと。

十番隊の執務室の前で桃が部屋に入るのをためらっているのを見た時から。

時間が経てば経つほど離れていく。
…日番谷もあえてそんな雛森を追わなかったし、会おうとはしなかった。

甘やかすことは雛森のためにならないからだ。

気持ちは今すぐにでも追いかけていきたかっただろう。
…日番谷の手は震えていた。

乱菊としては、かわいい妹みたいな存在である雛森に元気になってもらいたい。
ちょうど誕生日だし、女性らしいことをしてやりたいと思ったのだ。

力になるかはわからないけれど。

「……。」

「…やっぱり…。言われなかった?気にしてないって。」

「…はい。」

怖い気持ちもよく乱菊にはわかる。
…あの銀ぎつねに会うときも似たような体験をしたことがあったから。

「雛森、怖いのはよくわかる。でも…いつまでもそうしていられないのも分かるわよね?」

雛森は頷く。

「辛いとき、苦しいとき側にいてくれたのはだれ?」

たとえ、剣を突きつけられたとしても。
そこに想いがあるのならば。

「…日番谷くん」

「…だったら、怖がることないじゃない。それに今なら…」

乱菊は鏡を雛森に見せる。

「素直に言えると思わない?」

それは確かな絆。
誰にも切れることなどできない。

そして、家族愛とは違う特別なもの。

「う…わぁ…」

鏡の前に映った雛森はまるで別人だった。
肌は綺麗になり、大人になった雛森の輪郭をよく描きだしている。

「何か負けたくないとき、素直になりたいときは化粧していきなさい。…きっとあんたの力になってくれる。」

泣きそうになったが耐えた。
せっかく乱菊がしてくれたのに勿体無い気がして。

伝えよう。

…今なら泣かずに、気持ちを言える気がする。


「ありがとう…乱菊さん。」

クスっと笑うと桃の肩に手を乗せる。

「隊長なら、テラスにきっといるから行きなさい。…言いたい事があるんでしょ?」

「はい!」

さっきまでの雛森とは違う、生き生きとした表情になた。
再度、乱菊にお礼をいうと部屋をでた。


―今、伝えたいことがある。


テラスに行くと乱菊の言う通り、日番谷がいた。



「日番谷くん!!…あのね」










―ほんの少しの勇気を。
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