鋼の錬金術師のお部屋

□ガーネット
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     『ガーネット』










カリカリと鉛筆の音だけが響く。
ただいまテストを受けている真っ最中である。

順調にペンを答案用紙にはしらせていたウィンリィはふとグランドをみた。

金髪の少年が別の金髪の少年とグランドを駆けて行く。
彼らは学科が違うため、テストが終わってしまったらしい。

(…何やってんだか…)

頬に軽く笑みが浮かんだ。
少年たちは彼女の幼なじみ。

兄のエドに弟のアル。
ウィンリィはエドに視線を移す。

グランド駆けてくあなたの背中は空に浮かんだ雲よりも自由で。

(もう…すぐか)

もうすぐ。
もうすぐあなたと会えなくなる。

ウィンリィとエドは3年のため、来春で卒業を迎える。
一学期の進路選択でエドは理系大学で希望をだしたらしい。

ウィンリィは文系。
どう考えても離れ離れになってしまうのに…。

本人に聞いたところ、遠い大学を受けるため、家を出るという話だった。

あと30分という先生の合図で我に返る。
頭をふり、テストに集中する。

あんなことを聞いたばかりだからだろうか。
集中していないといつもそればかり考えてしまう。

テストの前に見た彼のきちんと整ったノートの四角い文字さえ。


すべてを照らす光に見えた


好きという気持ちがわからなくて

二度とは戻らないこの時間が

何よりも私に教えてくれた

果てしない時の中であなたと出会えたことが何よりも私を強くしてくれたね

夢中で駆ける明日に辿りついたとしても

(変わらないんだろうな)

そう。変わらないのだ。

話しを聞いた時いつまでも忘れないとあなたは言ってくれた。

時が流れ今頃私は涙がこぼれてきた。

でもまだ今は流さない。
まだその時ではないから。

あなたと過した日々をこの胸に焼き付けよう
思い出さなくても大丈夫なように

…向こうの大学へいっていつか他の誰かを好きになったとしても


あなたはずっと



特別で


大切で





―またこの季節が巡っていく


―未来であなたと会いましょう。












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