鋼の錬金術師のお部屋
□博学の錬金術師
1ページ/21ページ
にぎやかないつもの汽車。
耳をすますとあいつの声が聞こえてくるような気がする。
あれから2年…。
私は彼の意思を継がなくてはいけない。
いつもそう願っていたにちがいないから…。
*博学の錬金術師*
〜エピローグ〜
リゼンブールを出て2時間。
セントラル着くのには1時間はかかるだろう。
「ふあ〜…」
長旅で眠気がどっと押し寄せてくる。
「まだつかないのかな〜…」
ぼんやりと外の景色を眺める。
内戦があったとはおもえないほどの静けさだ。
もっとも都会ではないのだから、静かで当たり前なのだが。
「お姉ちゃん!」
後ろから幼い少女の声がした。
振り向くと5歳くらいだろうか。
退屈そうな顔をしている少女が話しかけてきた。
「なにかな?」
「お姉ちゃんの大きいねそのバック。」
少女はまるまるイスを占領していた大きなバックを指差した。
「へ?ああそうね。お姉さんのお仕事の道具がはいってるから。」
「お仕事?職人さん?」
「う〜んちょっとちがうなあ〜これはね、機会を直す道具なの。」
「え、じゃあ修理屋さん?」
「まあそんなところね」
「すご〜い…」
ものめずらしいそうにみていると母親だろうか。
制止の声が聞こえた。
「こらルチア、やめなさい。みっともないですよ。」
「は〜い…。」
「かまいませんよ。ほとんど私以外に見せるなんて事ないですし。」
「でも…」
「壊せる道具じゃありませんから。」
「すみません。」
すまなそうな顔をされたが、つまらなさそうだし、暇つぶしにもなる。
「いいえ、さ、おいで。」
「うわーい!」
バックから一つだけ道具を取り出すと、少女を膝にのせ、もたせてやった。
元々子供好きだし、いくら見ててもあきない。
―その時、静寂を切り裂くように銃声が聞こえ、男たちが車両に入ってきた。
「静かにしろ!!我々はこの汽車を占拠した!悪いがつきあってもらうぞ!」
「うわーん」
恐ろしさにルチアが泣き出してしまった。
「大丈夫よ、ママの所に…」
「動くな!!」
ガンッと顔の横を弾がとって窓ガラスを割った。
「止めなさい、小さい子供だっているのよ。手荒な事はしないで!」
「言う事がきけないなら…」
「聞けないならなんですって?」
すばやく男の背後にまわり、回し蹴りを一発くらわした。
「ぐわっ」
パンっと両手を合わせると男が逃げないよう拘束しつつカーテンでロープを錬成した。
「て…てめえ何者だ!?」
「ただの錬金術師ですよ。」
にっこりと犯人に怖い笑顔を返した。