long story 2
□『キセキ』
7.最後の儀式
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5人は心の内から突き上げられる思いを糧に歩き続けた。そして歩き続けるうちに空間が変化していることに気づく。しかし誰もそのことに触れることはしなかった。そこが戦いの場だと思ったからである。
そのうち5つのドアのある行き止まりに着いた。ドアにはそれぞれ属性の紋がついている。
「どうやらここで分かれることになっているようだな。たぶん黒き輝石を持つ者が待ってる。心していかないとな」
「そうだね。また集まって儀式ができるように」
5人は意志を確かめあい、それぞれ自分のドアを開いた。
草がドアをくぐると目の前にサナトが立っていた。自分を選び、自分達に1番立ちふさがってきた男が。
「遅かったな。ここまでの道程で迷ったかと思ったぞ。…さて、これが最後だ。決着をつけようじゃないか」
そう言うとサナトは風の刃を放った。草は風の防壁を作り、攻撃を防いだ。
サナトはそのまま襲ってきたが草は動かなかった。そしてぎりぎりまで引き付け、竜巻を作り出す。
サナトは容赦なくその竜巻の刃に切り刻まれたが、さすが風の属性を持つ者。このぐらいで倒されるわけはない。
「ふん、やってくれるじゃないか。少しおまえ達を甘く見すぎていたようだからな」
草は何も言わず、サナトの出方を見ていた。
サナトは斧を取り出し、その斧の周りに風をまとわりつかせると、そのまま草に突進してきた。
草は風を手に貯めたまま横に飛び、攻撃をかわそうとした。サナトはそれを見込んでいたかのように斧を横に薙ぐ。
草はとっさに風をためたままの手で防いだ。しかし斧にまとわりついた風に手を切られてしまった。
「っ痛」
腕はくっついているものの、激しくえぐられ、動かせる状態になかった。
その時サナトは先程と同じようにして草に突進してきた。草は急いで片腕の傷を治し、両手に風を貯める。そしてサナトが突っ込んでくる瞬間、両手の力を合わせた。
すると空間が歪む程のすさまじい力が生まれ、それはそのまま大竜巻となってサナトを包んだ。
「うぎゃあああー」
物凄い悲鳴が聞こえたがそれもやがて消えた。竜巻はしばらくその場に残り続けた。
竜巻が消えるとボロボロになったサナトが落ちてきた。体中傷だらけで、見るも無残な姿で。草はサナトに注意深くゆっくりと近づいた。
ぎりぎりまで近づいた時突然サナトが草の足をつかんだ。草は一瞬びくっとした。
「どこでそんな力の使い方覚えたんだ?1つ間違えれば、自分をも巻き込むような技を」
「今までずっと感じていたからさ。風をな」
サナトはふっと笑うと動かなくなった。草の足をつかんでいた手も離れる。
すると2人の輝石が共鳴し始めた。草は驚いて後退りする。
サナトの輝石が浮かび上がり、草の輝石に吸い込まれていく。輝石は少し大きくなり、不思議な光を放ち始めた。
草はしばらく輝石を眺めていたが何かを感じて歩き始めた。
真は中に入ると中にいたキャメルを見つめた。キャメルは表情も変えることなく真のことを見た。そしてすぐに身構えた。真も身構え、キャメルの出方をうかがう。
勝負はいきなり始まった。まずキャメルが水球を投げつけてきた。真は水壁で吸収したが、すぐにキャメルの矢が飛んできて、真の手足をかすっていく。その痛みで、真は今までのキャメルでないことがよくわかった。
力の使い方はキャメルのほうがよく知っている。圧倒的に不利な戦いである。
でも勝たなければならない。自分の為に。大切な人たちの為に。
そしてキャメル…母親の為に。真は自分の持てる力をもってキャメルにぶつかった。
しかしキャメルの力は強く、真は押され始めた。真は身を守りながら考えた。どうすればキャメルに勝てるか。
その時かなり無謀な方法を思いついた。
失敗したら確実に負けるだろう。だがこのままでは勝てない。
真は思い切ってキャメルに突っ込んでいった。キャメルは水球をぶつけてきたが、真はどうにかかわし、キャメルに直接水龍をぶつけた。
が、大ダメージを与えられたもののキャメルは倒れず、水球をもろに腹にくらってしまった。
とっさにキャメルの体に手をまわし、吹き飛ばされずにすんだが、立っているのがやっとの状態。
真はそのままの状態で渾身の力を込め、剣を作り出した。だがその為キャメルの体だけでなく真の体をも貫いた。そのままその場に倒れこむ二人。
キャメルはもう動かなくなっていた。真ももう体を動かせるような状態ではなかった。それでも真は自分の手の中にいるキャメルを抱きしめる。が、真の意識はそこで途切れた。
2人の間で輝石は1つとなり、2人の体を光球で包み込んだ。
燕がドアをくぐるとマスがいた。部屋の壁に寄りかかり、リラックスしているようである。