long story 3

□『+×−=∞』
 3.give×take
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 新学期が始まり、みんな学年が一つ上がった。ただ今のところ新入部員はおらず、六人で活動を続けている状態である。
「入学してすぐ恋愛応援部に入ってくるのは珍しいしね。いつもどおりしばらく待ちますか」
 三年生になった櫛渕楡は、新年度最初の定例会の席でそう言った。
「けどこのままないって可能性もあるよね。去年だって正確には一人だけでしょ?」
 珍しくニヤッと笑って三年生の神崎幸江が言う。
「まあ、そうだな。高島と藍原は飛び級組だし」
 同意するように頷く同じく三年生の坂東孝に二年生で部長の高島一と、同じく二年生で副部長の藍原十は苦笑いを浮かべる。
 ちなみに飛び級組とは、恋愛応援部員からの推薦によって恋愛応援部に参加している中学生や他校の生徒のことを指す。
「まあ、すぐに入部してくることは確かに少ないので、今のところは待ってみましょう」
 一の言葉を受けて部員全員が頷いた。



 それから数日後、幸江と孝は恋愛応援部の活動で海城高校に来ていた。慣れたように校舎を進み、屋上へと向かう。そこには一人の男子生徒がいた。少し長めの黒髪と漆黒の瞳が特徴的だった。
「久しぶり〜。元気してた?」
 ちょっと軽い感じで手を振ってくる男子生徒。二人はそれに相手することもなく目の前まで近づいた。
「新学年が始まって一気に依頼が五件も来たぞ、三国」
「そんなに来たの〜?俺、一人しかいないんだけど」
 おかしそうに笑う三国と呼ばれた男子生徒。それを見ながら幸江が聞く。
「で、どうすんの?今回は」
「とりあえずデータ見て決めるよ」
「わかった」
 孝は鞄からファイルを取り出し、三国に渡す。ファイルにざっと目を通すとまた孝に返した。
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