middle story

□『yu-kana』
 1.美少女転校生がやってきた
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やはり反応は返らない。そしてあまりに長く立ち尽くしている為先生やクラスメートが二人を見つめる。その時加奈が見ていた何もないところから火花が散る。みんな驚いてあとずさった。明星はただ加奈を見つめる。火花が落ち着くと加奈が口を開いた。
「なぜ今こんな時に。どういうつもり?」
するとどこからともなく声が響く。
「ずいぶんといい思いをしているようじゃないか。今この場をめちゃくちゃにしたら、おまえはどうなるのだろうな」
声はそう言うとふふっと小さく笑う。その様子に加奈は目を閉じた。
「加奈…」
明星は心配そうに加奈のことを見つめる。加奈は目を開けるとはっきりした声で言った。
「なら、あなたの思いも同じくめちゃくちゃにしてあげる」
加奈は自分の右手をまくりあげると、巻いてあった包帯を取る。腕には石が埋まっており、その周りをつたのような模様が覆っていた。その時加奈が何をしようとしているかに気づいた声が慌て、叫んだ。
「やめろ!そんなことしたらおまえもただではすまないぞ!」
「あなたに全てを消される位ならそのほうがマシよ」
加奈は左手を石に当てるとなにやら力をかけた。パリンという音とともに石が割れる。同時に加奈が気を失い、明星のほうに倒れこんできた。明星はどうにか加奈の体を受け止める。しばしの沈黙の後、先程火花が散った辺りに強い力が渦巻いた。←一番近くにいた加奈と明星はその力の余波を受けて後ろに吹き飛ばされそうになる。その時加奈の体が光り、一匹の犬が現れた。犬は二人の前に立ち、見えない壁を作って二人を守る。しばらくすると明星は力の渦の中に人の姿を認めた。大人の女だった。女は明星と加奈のことをものすごい形相でにらみつけてきた。明星は恐怖で呆然とその女のことを見つめ続けた。
 一方、佑太は違和を感じて立ち止まっていた。ちょうどバスケットボールの試合の途中。ボールがパスされてきて佑太の体に当たり、バウンドした。
「おい、祐太」
友達が佑太に向かって声をかける。それにもかかわらず佑太は校庭のほうを見つめた。そして突然校庭へと駆け出す。佑太の行動にクラスメートも先生も唖然とする。だがすぐに先生は佑太を追いかけた。佑太が走っていくと強い力を感じた。そしてその力が周りにいるクラスメートの女子達を攻撃しようとしていることに気づく。佑太は走りながら何やら唱えだした。
「我が内なる力よ、壁となりてかの者達を守れ」
佑太から光が迸り、女子達を包む。放たれた攻撃はその光の壁によってはじかれた。ようやくそこで佑太は女子達のもとにたどり着いた。←みんな佑太のことを見る。佑太はすぐに犬が倒れた加奈と明星を守っていることに気付いた。
「てめえ、何てことしやがる」
女は佑太を見つめた。
「貴様もこの女も、ここにいる人間もくそくらえ。消えてしまえ!」
女は佑太に向かって力を放つ。佑太はまた何やら唱え、自分の前に壁を作る。だが先程よりずっと強い力に佑太は後ろへと押される。そんな時佑太を追ってきた先生が到着した。佑太はどうにか力を足し、攻撃を打ち破った。しかし次の瞬間、佑太の体中に傷ができ、後ろに倒れる。慌ててその体を先生は受け止める。だが女がまた攻撃しようとしていることに佑太は気づくと苦しそうな声で先生に言った。
「おまえが巻き込まれる必要はない。俺から離れろ」
しかし先生は離れず、逆に佑太のことを抱きしめた。その時女が力を放ってきた。佑太は目を閉じた。だが攻撃は当たらなかった。犬が二人を守ったのである。攻撃をはじくと犬は佑太の傷を治した。
「犬君。何でここに。誰が加奈を守るんだ!」
女は犬君がいないことをいいことに、魔の手を加奈へと向ける。
「加奈!」
佑太は叫んだ。しかし加奈の少し前で攻撃は止められた。これには女も驚く。←するとそこに幼い女の子が現れる。
「本当にあなたを選ばなくてよかったわ」
「貴様、何者」
女の子は何も言わなかった。
「もしかして…石の意志?」
佑太がびっくりしながら言った。
「よくわかったわね。神谷佑太。私を受け継ぎし荒井加奈の騎士」
女の子はにっこり笑った。佑太は微妙に赤くなる。一方女は女の子に手を伸ばした。しかし手は届かず、逆に見えない力で抑え込まれる。
「さて、神谷佑太。私はこのままではいられないから荒井加奈に宿る。だけどあなたが望むなら力を分けてもいい。だが力が目覚め、今までのようには生きられない」
佑太は女の子を見つめた。
「加奈を守れるなら別に構わない」
女の子は微笑んだ。
「わかったわ。ではこの女の対処、頼むわね」
佑太は頷いた。それを見ると女の子は光となり、二つに分かれた。そして加奈と佑太にそれぞれ飛んでいく。加奈が光を受け取ると犬君が狼のように変化し、佑太は自分の中の力が大きくなるのを感じた。力の受け渡しが済むと、佑太は女を見つめた。
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