今夜あの喫茶店で

□4.夜中のお茶会〜viewpoint of MAYU
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 この日、私は少しドキドキした気持ちでいつも行っている喫茶店へと向かっていた。今日は隼人が友達を連れてくると言っていたからだ。
「こんばんは」
「こんばんは、真由ちゃん。もう来ているよ。今日は何か人数が多いみたいだね」
「はい。今日は友達を連れてきてくれると言っていたので」
 私の言葉にマスターは微笑んだ。
「そうかい。よかったじゃないか」
「はい」
 私は少しうれしそうに頷く。と言っても、ほとんどの場合他の人にはわからないのだけど。
「真由ちゃんはいつものでいいかな?」
「はい。それでお願いします」
「わかったよ」
 マスターが頷くのを見ると、私は早速二階へと上がった。
 二階には隼人の他、その相方である世良仁と見知らぬ女の子が座っていた。
「真由。こんばんは」
「こんばんは。隼人。そちらの人達ですか?隼人の友達とは」
 私は二人のほうに視線を向ける。隼人は小さく頷いた。
「とりあえず紹介するよ。こっちは見たことあると思うけど、black colorの相方、世良仁。隣はその友達の野々原優希だ」
「隼人から話は聞いてるよ。真由さん。よろしく」
 手を差し出してくれる世良さんに私はおずおずとその手を握る。
「こちらこそよろしくお願いします」
「そんなに固くならなくてもいいのに」
 苦笑いを浮かべる世良さんに私も苦笑いする。
「本当に気にしなくて大丈夫ですよ。よろしくね。真由さん」
 今度は野々原さんが優しい声音で言ってくれる。少しだけ心が軽くなったような気になった。
「はい。ありがとうございます。世良さん、野々原さん」
 すると二人の目が丸くなる。
「別に隼人みたいに名前の呼び捨てでいいのに」
「え?でも…」
「そうですよ。それとも…真由さんにとって隼人さんは特別ですか?」
 野々原さんの言葉に思考が一旦停止する。
 とある一件から名前のみで呼ぶようになった。だけど…特別?隼人が?どうなんだろう?
「優希!何言ってんだよ」
 怒ったような隼人の声にビクッとした。
「だって隼人さんにだけそうだから」
「特別…といえばそうなのかもですが…単純に長く過ごしているからだと思います」
 私の言葉に他の三人の目が丸くなる。
「ふーん…特別といえばそうなのかも、ね。意味深だね」
 ニヤリと笑う世良さん。すると隼人が怒りを爆発させた。
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