long story 3

□『+×−=∞』
 6.plus×minus
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 また新たな春を迎え、一つずつ学年が上がった。そして今年は早いうちに新入部員が恋愛応援部に入った。汐入遥、山科疾風、成瀬莉音の三人だ。

「去年は女の子二人しか入らなかったから、今年は男子も入ってくれてホッとしたよ。さすがに僕と十の二人だけじゃ困ったし」
 新入生が入った四月半ばの定例会にて、三年生になった田沢俊哉が安堵したように言う。
「僕はそこまで不安には思ってなかったけど。でも少なすぎるのも考えものだよね」
 相づちを打つように同じく高校三年生になった相原十は言ったが、胸の内では全く違うことを考えていた。恋愛応援部の部長で幼なじみの高島一のことだ。
 バレンタインデーの時から様子が変なままだった。今のところはひどくなることもないが治ることもない小康状態。ただこれからのことを考えると十は不安なことがあった。
 現在、一は高校三年生。誕生日を迎えれば十八歳になる。この年齢になった時一がどうなるかが不安なのだ。
「十、十」
 一の声に十はハッとした。考え事に没頭するあまり定例会をしていたことを忘れていた。
「あ、ごめん。えっと…プリントだよね?」
「うん。お願いね」
 十は自分が持っていたプリントを部員達に配る。それを使って一は説明するが、十の耳には全く入っていかなかった。
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