今夜あの喫茶店で

□4.夜中のお茶会〜viewpoint of MAYU
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「隼人は?大体決まってんの?」
「基本的にはニルギリのストレート」
「やっぱり違うか?俺、よくわからないけど」
 そう言われて私と隼人は顔を見合わせる。
「色々飲んでみるとわかると思いますよ。まあ、私の飲むお茶は夜向きではないんですけど」
「そうなの?」
「はい。ウバは独特ですから。…そういえば世良さんと野々原さんは何を頼まれたのですか?」
 そう聞くと今度は世良さんと野々原さんが顔を見合わせる。
「名前はいくつか知ってたけどそれ程味はわからないから…無難にダージリンにしたわ」
「そうでしたか。でも一番安心して頂けますよね」
 野々原さんにそう言いながらカップにお茶を注ぎ、口をつける。
「ところで…話は変わりますけど世良さんと野々原さんはどうやって出会われたのですか?野々原さん、芸能関係の仕事をしていらっしゃるわけではないですよね?」
 そう聞くと野々原さんはにっこり笑った。
「違いますよ。今のところただのフリーターですし。…真由さんはこの喫茶店の前がスタジオだってこと知ってます?」
「はい。隼人から聞きました。そこで時間を潰してからここに来ることもあるって」
 この言葉に仁さんは隼人を見てニヤニヤしたけど、野々原さんは笑顔で言葉を続ける。
「そこに向かう途中でファンに追いかけられたことがあってね。ちょうど自転車だったこともあって助けたの」
「そうだったんですか。偶然、なんですね。私と隼人も偶然でした」
「そうなの?俺、出会いは聞いてないんだけど」
 世良さんが身を乗り出して話に入ってくる。
「私がこの喫茶店に来る時にぶつかってしまって。それでとても気持ち悪そうだったから一緒に連れてきてしまったんです」
「ぶつかったって…なんか少女マンガみたいですね」
 ふふっと笑った野々原さんに私は苦笑いを返す。
「全然そんな感じではなかったですよ。最初は…ちょっと怖かったですし」
 すると隼人はバツの悪そうな表情で頭をかく。
「ちょうど飲み会に仁が優希を連れてきた日でさ。ちょっと気が立ってたからな」
「ん?ってことは、隼人は優希と真由ちゃんに同じ日にあったわけ?」
「そう…だな」
 世良さんの言葉に隼人は思い出しながら答えていた。
「でも気が立ってたって…何かあったの?」
 そう聞いたら隼人は苦虫をかみつぶしたような表情になる。不思議に思っていると苦笑いを浮かべた世良さんが口を開いた。
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