long story 2

□『死神の下り立つ時』
 3.光獅の心
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「途中で会ったから」
「心実!?何でここに」
 心実もといガブリエルは答えなかった。そのまま光獅に近づく。
「光獅の意識は今深層心理にある。早く助けないと体に負担がかかる」
 心実はその場にいた全員を見つめた。
「力を貸すわ。誰が助けに行くの?」
「一輝は絶対。僕も行こう」
「俺はこっちにいる」
「あなたは?」
 心実が零紀に視線を向ける。
「できたら俺も行きたいが…大丈夫か?」
「大丈夫よ。じゃあ行く人はこっちに来て、私の手に手をかざして」
 三人は言われたとおりにした。
「じゃあ、行くわよ」
 心実の声を合図に、三人の意識は光獅の中に入っていった。

 光獅は闇の中で目を覚ました。真っ暗でここがどこかわからない。生きているのか、死んでいるのかさえも。
 その時光とともに明人と一輝、もう一人見知らぬ男が現れた。
「おまえら何でここに…」
「ミカエルがこんなところにいるからだ。ここはミカエルの心の中。早く戻ろう」
 光獅は横を向く。
「何で死なせてくれない?生きる気なんてこれっぽっちもないのに。早く楽にさせてくれ」
 一輝は痛ましそうに光獅を見た。
「俺がミカエルの親を殺してしまったのに覚えていないから?」
 光獅が顔を上げる。
「復讐を考える程傷つけること、他に浮かばないから」
 光獅は視線を逸らした。
「もうどうでもいい。これ以上俺にかまうな」
「嫌だ!!」
 一輝の声に驚き、視線をそちらに向けた。一輝の頬に涙が伝っている。その一輝の頭を零紀が撫でた。
「記憶はない。でも、体が、心が、覚えている。この涙がその証だ。死を感じると止まらなくなるんだ」
 光獅は戸惑った。その時黙っていた明人が口を開く。
「おまえが気づかなくても、紫木光獅いや白石光獅がいなくなると困る人間はいるんだ」
 光獅はうつむいた。そんな光獅に一輝が手を差し伸べる。
「戻ろう。みんな待ってる」
 光獅は恐る恐るその手をとった。同時に光が溢れ、四人を現実へと引き戻した。

 光獅は目を覚ますと、すぐに周りを見回した。自分を助けた者達の姿がある。みんな疲れたのか眠っていた。
「気づいたか?」
「死神…」
「みんなに感謝しろよ」
「…ああ」
 光獅は一番そばにいた一輝を見た。まだ涙の跡が残っている。光獅はなぜかホッとした。そしてしばらく一輝を見つめ続けたのだった。





4.明人の想い
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