D.Gray-man

□思いをつなぐ
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 こちらに背を向けまるでのの字を書くように項垂れている大きな背中に、小さく笑みを零しながら声をかける。
「嘘だよティキ。ちゃんと用意してあるさ。」
「え?」
 呼びかければ項垂れたままの姿勢で振り返るティキちょっと本気で涙ぐんでる。ちくりと罪悪感。だから本音を打ち明けることにした。
「忘れたりするわけないじゃん。ちょっと意地悪しただけ。会えなくって寂しかったのにあんたは何事もないようにやってきてちょっとムカッとして意地悪したさ。」
 バツが悪そうにごめんと見上げてくるラビに、ティキは自分は大事なことを忘れていたのだと気付かされる。
 お互い毎日いられるわけでなくて、離れることに慣れすぎてしまって。だからと言ってそれが当たり前になって良いわけじゃない。離れていれば寂しいのだ。そんな簡単なことすら自分は失念していて…煙草とは違う苦味が口の中に広がって行く。

「ラビ…悪かったよ…。俺に会えなくって寂しかった?」
 煙草を灰皿に押し付け火を消し問いかける。
「あんたはちがうんか」
 ムッとしたようなそれでいて寂しそうな、そんな複雑な色合いの瞳がゆれている。
(ああ、そんな顔しないでくれ、たまらなくなる。)
「寂しかったよ。」
(そう、俺も寂しかった。)
 口に出したら改めて自覚する自分の気持ち。仲間たちといても埋められることのない心の空洞。
「ほんと?」
 不安そうな瞳。後悔に胸が痛くなる。
「会いたかった。嘘じゃないよ。」
 上手く口で伝えることができないから態度で示す。ギュッと抱きしめればすっぽりと納まる小さな体。自分を包む温度に安堵したようにラビがホッと息を吐き体の力を抜いたのが解る。
「じゃぁ許してあげるさ。」
 そういってラビが少し身じろぐので抱きしめる腕の力を緩めれば、そっと体を離し枕の下に手を伸ばしチョコを出す。スッとこちらにチョコの包みを差し出すので手を伸ばせばちょいと引かれる。

「ラビ?」
「許してあげるからさっさとキスするさ」
「!」
 そういって小首をかしげ目を閉じる恋人にティキは再度ぐっと引き寄せると思いを込めて口付けた。
 久し振りに触れる唇は甘くて、そして何よりも欲しい物だと気付く。
 そう、チョコなんて本当はどうでも良かったのだ。

 (ラビに会う口実がほしかった。)

 月日が経てば経つほどに、連絡の取り合うことのない自分達の関係に不安が出てくる。自分は結構自由気ままにいきてて、ラビもそんな自分を好いてくれているのだと解っている。
 でも時折何も言ってこないラビは自分が思っているほど好きではないのかもと思ってしまったりするのだ。ラビの気持ちを疑いたいわけじゃなくて、求められないことが少し不安。
 だがそれを言ってしまうのは己のわがままな気がしてた。でも、今日会って解った。
(ラビも俺を欲してた。)
 そしてラビが自分と似た考えを持っていたのだと言う事もわかった。
 ラビは俺の自由気ままなところも好きだから、きっと言えなかったんだと。自分がわがままだと思ったのと同じように。
 
 深く口付けた甘い唇を啄み放せばホウッと熱い息を吐くラビ。あわさる瞳は熱に潤んでいて、そのままゆっくりベッドに押し倒せば恥ずかしそうに目を伏せる。
 それが合図になったかのように、二人は会えない時間を埋めるように体を重ねあった。
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