D.Gray-man
□触れ愛
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ふと、突然。本当に突然なのだが隣にいるラビを見た。
ラビは隣でのんびりと本を読んでいた。特に意味もなく、何か用があったわけではなく自然に目がいって暫く何の気なしにそれを見ていた。
静かに文字を追うラビの視線。そっとページをめくる手の仕草。
…そのどれもがドキリとするほど綺麗で、凄く……触りたくなってしまった。
そんな風に一人ドキドキとしていたクロウリーの方へ不意にラビがこちらを向いた。
「!」
思わず心臓が口から出るかと思った。
「なに? どうしたんさクロちゃん」
「へ!?」
余りにビックリして飛び退りそうになる。そんなクロウリーにラビはクスリと笑い
「そんなに見つめたらオレ穴開いちゃうさ」
と、茶目っ気たっぷりな瞳をよこした。
「! す、済まないである! そんなつもりでは…」
しどろもどろになるクロウリーの姿にラビがたまらず噴出した。
「…ぷっ! もークロちゃん冗談だって本気にしちゃだめさ」
「え? あ、そ、そうであるな…ははは」
クロウリーが乾いた笑いをもらすとラビが先ほどのからかいを含んだ顔とは違った柔らかい笑顔を浮かべ改めて問いかける。
「…で? どうかしたんさ?」
「え? あーいや…別にその…」
先ほどの自分のことを問われているのだとは理解しているのだが、どのように言っていいのかわからずどもってしまう。
「そう? すんごいラブ光線貰った気がしたんだけど…勘違い?」
ラビの何ものをも見透かすような視線にクロウリーは咳払いをして、
「…違わないである」
と白状した。
「ふふふ。素直でよろしい。」
ラビは正しい答えを得たことに満足してにっこりと微笑んだ。
「で?」
どうして? とラビの瞳が先ほどの問いかけに戻り、クロウリーは恥ずかしそうに手を組み視線をそこへ落とす。
「ラビが、その…凄く綺麗だったので…ちょっと触ってみたかったなぁと…思ったである」
組んだ手をモジモジと動かしそうこぼした瞬間、ラビの動きが一瞬止まりマジマジとクロウリーを見つめる。
「…クロちゃんって時折凄いタラシさー」
「タ…!?」
誑し!? っと、声にならない叫びをもらし赤面するクロウリー。
「ふふ、超赤面ものさ。でも、嬉しいよ? そういう風にオレに欲を感じてくれるんは」
そういってラビは手に持っていた本を閉じると隣にいるクロウリーに身を寄せるとそっと手をとる。
「いいよ触って。…クロちゃんのしたいようにしていいよ?」
手をとり上目遣いに見つめるラビに思わずクロウリーの喉がなる。
ラビに勧められるまま、緊張した面持ちでクロウリーの手がゆっくりとラビの頬に触れる…ところまで来たのだが、そこでぴたりと止まり動かなくなってしまった。
一向に触れてこないクロウリーをラビが不思議そうに見上げると今にも茹で上がる蛸のように顔を赤くして硬直していた。
(可愛い)
「まったくクロちゃんは本当に可愛いさ〜。いつもあんなにエッチなことしてるのにいつまで経っても初心さ」
「なっ!? エッ!!?」
何を!? エッチって!!? と言いたいのだろうが、余りの緊張に言葉になってないクロウリーの台詞を正確に理解しつつその動作にすら愛しさを覚えるラビ。
「ふふふ、ベッドの中のエロいクロちゃんも好きだけど、オレ普段のそういうクロちゃんも大好きさ」
そういってラビは触れていたクロウリーの手を自分の頬へと触れさせて愛しそうに頬を寄せる。
びくりとクロウリーの体がはねたが、嫌がるそぶりも手を引くこともなく逆にそのままおずおずと撫でてきた。
「わ、私もラビのことは大好きである」
恥ずかしそうに、だがしっかりとした声音でそう告げるクロウリーにラビは破顔するのだった。
END