Pumpkin Scissors
□愛しのペシミストへ
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君の涙は美しい…ただ、それを流させたのが自分でなかったことに悔しさを覚えたけれど。
**愛しのペシミストへ**
(あいつ、ようやく泣けたな……)
いつも泣きそうな顔をしながら、それでも笑うあいつに俺はどこか苛ついてた。
何でもっと素直に求めないのか…。
大方自分は救われてはいけないのだと言う悲観的な考えがあるんだろう。
あいつの置かれていた状況は知っているし、そう考えてしまう気持ちも分からない訳じゃないが正直反吐がでそうだった。
そんなもんはお前が決めることじゃねーんだと、どうして気づかない。
人間なにかしら罪を犯してる。
罪人が救われてはならないのならきっとこの世に救われて良い奴などいやしないのだ。
俺がそれをいくら説いたとて、お前は受け入れなかった。
それは俺がお前を愛しているからだ。愛故に自分贔屓をしてると思ってる。
だが違うよ。
俺は誰も贔屓になどしない。
お前に対したって過ちであれば叱るだろう。
俺は俺の考えを愛情故に曲げたりはしない。
だがお前にはそれを理解はできなかったのだろう。
だから第三者の声故に、羨望すらする故に、隊長の言葉はよりお前に届くのだろう。
今はまだほんの僅かな可能性を気づかされただけだが、きっといつかお前も気づく。
救われてはならない者など居ないことに。
そして、いつかあの痛ましい微笑みが本当の笑顔に変わればと俺は願う。
それが誰の手によってでも。
……ただ、本音を言うのなら。
お前にそれを与えるのが俺でないことが悔しかった。
ほんの少しだけ……。
END
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少尉と伍長のやり取りをみていたオレルドさんの胸中。
愛するものがよい方向へと変わっていくのを見るのはとても嬉しいことであり、でも反面それが自分でない事になんとも言えない焦燥や、遺憾な思いを味わってみたり。人とは複雑な生き物です。
そんな複雑なオレルドさんの心境を少しでも画けたらなと思いました。
僅かでも楽しんでいただけていたら幸いです。