Pumpkin Scissors

□ポッキー・ゲーム
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 3課の飲み会で泥酔したマーチス――あいつに酒を飲ませてはいけない――の提案で問答無用で始まった王様ゲーム。みなそれなりにほろ酔いなのか退屈していたのかは知らないが、いつも口うるさいはずの隊長も何も言わずあっさりはじまったしまった。
 そしてはずれくじを引いたデカブツと俺。
 デカブツにマーチスが出したお題があったのだが、あいつはそれをクリアーできずご立腹した暴君マーチスに罰ゲームが科せられた。
 罰ゲームはポッキーゲーム。
 簡単に言えば両端から互いに食い進めて行って何処まで食えるかって奴だが、こういうのは普通女の子とやるから楽しいものだと思うのだが、マーチスの奴はパートナーになった俺にまで連帯責任だ!!とかいってお鉢が回ってきた。
(…マーチスの奴普段の腹いせか!?)
 俺達の関係を知らないわけじゃないはずのマーチスは時折腹黒くなる。
 皆俺を普段からサドだなんだとか言うけどな、間違えるな真のサドキングはこの眼鏡だ。
(まったく困った幼馴染だ)

「オレルドさん…俺、なんか凄く恥ずかしいです…」
 デカブツが皆の視線を一身に浴びながらポッキーの端をかじり、恥ずかしそうに俺のことを上目遣いに見つめてくる。
 なんだってコイツは俺よりでかいくせにいつも上目遣いに人を見るのか。
 誘ってんじゃなかろうかと内心狼になりそうな自分の欲望をありったけの理性でねじ伏せつつ、それを顔には出さずに悪態をつく。
「はいはい俺だって恥ずかしいよ。何が悲しくて男二人でポッキーゲームなんだ? それもこれもお前が負けるからいけないんだろうが。」
 よくもまぁそんな嘘が言えたもんだと我ながら感心しつつ俺はデカブツと交互に口に銜えたポッキーを折れないように気をつけながら食べ進めている。
「だ、だって…」
「だってもヘチマもねーっつーの。ほら良いから食えって。罰ゲームがおわらねーだろ。」
 正直俺としては罰ゲームでもなんでもない。マーチス以外の皆には内緒ではあるが俺達は付き合っている。
 俺にしてみたらこんなことは大したことではなくて、当然こんなことよりもさらに人には言えぬところでまで繋がってたりするわけなのだからこんなのは序の口なのだ。
 俺はコイツとの関係を恥ずかしいとも思わないし別段隠したいとかも思っていないのだが、デカブツのほうは違うらしい。
 あいつは俺に自分のせいで悪い評判――まぁいわゆるホモだとかそういうこと――がつくことを嫌がっているらしく、人に関係がばれることを恐れている。
 だから俺のためというこいつの意思を汲んで俺は人前ではなるだけそっけなく接することにしている。
「うっうっごめんなさい。俺なんかとこんな…」
「デカブツ、それ以上いったらゲンコな。」
 デカブツの言葉をさわやかな笑顔で遮り俺は軽く目で制した。
「ご、ごめんなさい…」
 俺の言わんとすることを気付いたらしいデカブツは済まなそうに、そっと目を伏せる。
 全くこいつの自己評価の低さをどうにか出来んものだろうかと俺は心の中でため息をつく。
 何度言ってもこいつは自分を蔑む事しかしない…もっと自分に自信を持って欲しいのだが、色々合ったこいつにはなかなか難しいことなのかもしれない。だがそれで「はい、そうですか」と仕舞いにしては何も変わらないだろうに…。
 いっそみんなの前でこのままキスしてやろうか?などとポリポリとポッキーを貪りつつ迫る唇を見ながら俺はそんな物騒なことを思った。
 そうしたら、あいつは一体どういう顔をするだろうか。
 真っ赤になって慌てるか?
 それとも泣き出すだろうか。
 なんて、結局想いはすれどあいつの嫌がることなど出来ないのだと、俺自身が一番分かっている。
 なんだかんだと俺はデカブツに弱い。
 それだけデカブツが俺にとって大事な奴だからなんだとこのニブチンはいつ気付いてくれるやら…。
「さっさと気付けよな」
「?」
 俺の言葉に不思議そうな顔をしたデカブツの、唇すれすれでポッキーが小気味よい音で折れた……。

END


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ポッキーネタ(笑)

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