Pumpkin Scissors

□バレンタインデー
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+バレンタインデー+
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「なぁデカブツ」
「はい」
「オレ達付き合ってるよな?」
 更衣室のロッカーを開けたところでオレルドに声をかけられるや否やそう問いかけられる。
「え? あ、…はい」
「じゃぁ今日は何の日だ?」
 恥ずかしそうにそう頷けば間髪いれず質問を返され、オーランドは首をかしげる。
「今日ですか? ……2月14日ですよね…?」
「そうだよ14日の1730、すでにもう帰ろうかって時間だよ」
「……はい???」
 さっぱり解っていないのか困惑気味に首を傾げているオーランドに、オレルドは僅かにイライラしてしまう。
「かーーもう、鈍いやつだな! 14日だよ14日! バレンタインデー! 恋人達のめくるめく愛を確かめ合う日だろうが!?」
オレルドがそうまくし立てれば瞳をキョトリとさせたオーランド。
「そ、そうなんですか? あれってお菓子会社の陰謀じゃ…」
 自分がそう告げた途端にオレルドがガックリ脱力したのがわかった。
「もうバカ…。そりゃぁ後から菓子会社が勝手に取ってつけただけだろ! バレンタインは聖バレンティヌスの慈悲と愛の出来事が始まりなの!」
「そ、そうだったんですか……」
 オレルドが言った聖バレンティヌスについては解らなかったが、オーランドは自分がとんだ失言をしたことには気がついた。
 だが、時すでに遅くオレルドは少しご機嫌が斜めになってしまったようだ。
「くそー冷たいやつだな。たとえただのお祭りに過ぎなくても何かあってしかるべきじゃないのかよ。」
「ご、ごめんなさい……俺そういうのした事なかったから頭になくって…」
 オーランドに悪気はなかったのは十分解っているが、オレルド自身もそれなりに楽しみにしていた為にショックは大分大きくつい意地悪な気持ちになってしまう。
「あーそうかよ、なら二人で過ごすためにレストランを予約した俺はとんだ間抜けだな」
 プイッとそっぽを向くオレルドにオーランドはあうあうと慌てふたき、どうにか機嫌を直してもらおうと躍起になる。
「そ、そんな・・・御免なさいオレルドさん、機嫌直してください! 来年は忘れないようにしますから・・・」
 来年は忘れないようにするというオーランドの言葉に、来年も一緒に居たいという意思があるのだと彼の思いが読み取れオレルドの表情が僅かに綻んだ。
「ふーんそうだなぁ〜どうすっかなぁ〜。俺もお前ともめるのは不本意だしなぁ」
「オレルドさん…!」
 オレルドの言葉にぱっと表情を明るくさせたオーランドの顔を見つつ、オレルドは暫く逡巡の末に口を開く。
「んじゃぁお前が俺にキスしたら今日のことはチャラにするよ」
「え!? き、キスですか!?」
「そうだよ、お前自分からしたことないだろ。いつも俺からしちまうからな。ほれ、しろ」
 オーランドのほうへと向き直り唇を指差すオレルドの予想外の展開にオーランドは恥ずかしそうに頬を朱に染める。
「そ、そんな急に言われても」
「なんだよ仲直りしたくないのか? そうかそうか…」
 背を向けようとするオレルドに半べそ気味になりながらすがりつくオーランド。
「ち、ちがいますぅ! します! しますから!」
 そんなオーランドの視線を感じながらオレルドは見えないところでぺろりと舌を出した。
 こんなこと普段はあまりしないのだが、オーランドがあまりにも可愛い反応をするのでこんなふうに何かあるとつい困らせてしまう。
 小学生のような子供じみた衝動だと苦笑いをしつつも、オレルドはついつい意地悪をしてしまうのだ。
「別に無理にしなくても良いんだぜ?」
 片目を閉じながらちらりと伺い見る。
「ち、違います……恥ずかしいだけです…機嫌…直してください…」
 そういうと耳まで真っ赤に染めながらオーランドは屈みこむとオレルドの頬へと唇を寄せる。
 本来は唇にしてほしかったのだが、オレルド自身が後ろを向いていたのだから仕方がない。
 もう一度させることもできたが、顔から火が出るとは正にこの事ではないのかと思えるほどに赤面したオーランドにそれはやめておくことにした。まだ時間はあるのだ。
「レストランを予約してあるんだ。一緒に行ってくれるだろ?」
「……はい」
 オーランドは恥ずかしそうに目を泳がせていたが、オレルドがそう問いかければそっと視線をオレルドに止めそっと頷いた。

END


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オレ伍でバレンタイン。

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