選択と道標 〜パラレルとリアル〜
□第3章:止まらぬ針が示す道。
飛ぶ最中、いつもと違う音が耳に響いて、私は不快感を露わにした。
(何・・・、これ。いつもと違う)
まるで歯車が一つ一つ零れ落ちるような感覚に、妖精釘宮しゃんは更に険しい表情をした。
『不味いですね・・・、時計が維持出来なくなっています』
(それって、完全に壊れるってこと?)
『・・・最悪な話、帰ってこられないですね』
彼女の再設定のお陰で行きは保障してくれているのだが、帰りは厳しいようだ。
『そうなった場合、もしこれで失敗したら、永井様は2004年から戻れないまま、高橋様も喪った状態になります・・・。それでも―――』
(そう)
こんな時、とも子しゃんだったらどうしていたのだろう?とふと思う。
まだ全盛期の彼女ならば、死んだ直純しゃんも助けられるのでしょうか。
私には、そんな“力”は無いから・・・。
『―――永井様!!歪みが発生しました!!』
(!)
稀に発生する時空の歪み。
これに巻き込まれると良くないと聞いていたのだが、まさかこんな時に二つも発生するなんて・・・。
『これは、極めて危険です!!ですが、今の状態では回避出来ません!』
(回避出来ないのなら、あえて飛び込むことは出来ないのですか?)
『えっ!!?』
何を言うんだ!?と言わんばかりに、彼女は激しく驚いた。
『何を仰るんですか!!それこそ、飛び込んでしまえば目的地に辿り着けないんですよ!!?』
(でも、避けられないのなら、あえて飛び込んでみたらいいかなぁって)
それに、あそこから親しんだ声が聞こえてきた気がする。
飛び込んでもきっと、何とかなるだろう。
(お願い、私の、最期のわがままを聞いてほしいの)
『・・・最期だなんて言わないでください。これ以上喪うのは嫌ですよ』
彼女は深く、深くため息をつくと、壊れかけの時計を最大限駆使して衝撃に備える準備をした。
(さて、どっちに飛び込んだらいいんだろう。左からは何やら楽しそうな声がするし、右からは聞き慣れた声がする・・・)
- *左の歪みに飛び込む。
- *右の歪みに飛び込む。
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