選択と道標 〜パラレルとリアル〜

□第3章:止まらぬ針が示す道。





―――あの人が突如姿を消して、どれだけ経過したのだろうか。





ボロボロの懐中時計を何度も何度も修復して《あの頃》へ戻るものの、結局、最後は・・・。






(いいえ、今度こそ、今度こそあの人をここに連れてこなければ。私が“この記憶”を持ち続ける限り―――)






誰からも消えてしまった彼女の記憶と共に、今日も私は助ける為にあの頃へ行く。






**






これで何回目だろう。2004年へ行くのは。





(正直、ここまで来ると精神的にキますねぇ・・・。でも、私も負けない!!)




『永井様、そろそろお時間です』
「ええ。行きましょう、釘宮しゃん」





妖精の釘宮しゃんが、何度目かの移動準備をする。





その都度不穏な音を立てる懐中時計に、彼女は少し動作を止めた。






「どうかしました?」
『・・・すみません、永井様。正直、ここが限界です』
「みゃっ?それすら何度目みゃんですかぁ〜〜〜」





彼女がこう言うのは、もはやいつものことだった。



元々1回目の軸越えで限界だったこの時計を無理矢理直しているから、本格的に壊れても仕方がない。





だけど、それはまだ今じゃないと、私は思っていた。





「大丈夫です。今度こそ、必ず」





そう言って、彼女を宥めるのもいつものことだった。




しかし、彼女の表情は険しいままだった。





『ですが・・・、設定に、僅かですが誤差が発生しています。いつものように上手く起動するかどうか』
「貴女を信じます。無事に飛べるのなら、構いません」





これは、私自身の【罪】との戦いだ。



だから、例え越えることに失敗して、時空の狭間に取り残されても仕方ないと思っている。






『・・・分かりました。移動中に“力”を消耗しないよう、そして、貴女を無事目的地に着けるよう再設定します』
「ありがとう」





もう何回もしている時点で、私の覚悟は変わらない。




彼女もそれを察して、飛ぶ準備を再び始めた。






『―――それでは、行きますよーっ!!』






準備が整い、再び私は“飛んだ”。
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