現実(リアル)と空想 〜 パラレル 〜 2
□IFルート:過去の破片。
2ページ/68ページ
―――そうこうしている内にPV撮影もフェスタもアルバムリリースも終わり、気がついたらもう2014年。
PV付きの初回盤は、予想を反する勢いで在庫が完売した。
(やっぱ俺のファンの人も買ってくれたのかなぁ。感想メールもよく届く届く)
去年の12月からずーっと、アルバムの感想が届きっぱなしだった。
キャラソンに自身のPVをつけるなんてただの不安要素でしかなかったけど、売り切れるほどの人気なら安堵した。
(まあ、元々従来より在庫数減らしちゃってたらしいし、逆に申し訳ないなぁ)
実は、事前に今回のアルバム初回盤は在庫が少ないと告知していたのだ。
少しでも予約数を知るために。
―――実は、俺の問題はそこから始まっていたんだよね。
―――
2014年 某日
次の大型フェスタを繋ぐ為に、開催されるソロライブ。
それに何と、アルバムを出したばかりの俺が選出された。
あの予約数はこの為にあるとリリース後にそう言われていたからね。
「そんなわけで、こちら側も是非彼でお願いしたいのだけれども、宜しいかしら?」
松井プロデューサーと話をしているのは、何とあの田中さん。
田中さん曰く、「もしこちらの要望に答えていただければ、ライブ会場を早急に手配できる」とのこと。
・・・前に細谷君辺りがちょこっと言ってたけど、何と田中さんはお台場周辺を監視区域にしているらしい。
俺も自分のツアー(※Zeppに限り)ではよくお世話になりましたよ。流石に永井さんの食生活云々言われたときにはビビったけどね。
「―――ありがとうございます!先ほどの取引は厳守しますので、ご安心を」
あ、商談成立してる。ということは俺で決定かぁ。気合入れないとな。
―――それからは、俺自身の新曲や急遽決まったブン太ライブ(タイトルが来るのは予想通りだったけど、サブタイが“夏祭り”って。俺あんまり夏にはいい思い出が無いや(汗))の打ち合わせでまたもや日常はバタバタ。
あと事前に決めていたツアーライブもあったから、もはやどれがどれやら軽く混乱状態。
アレ今俺何の話してたっけ?―――ああそうだ、とも子さんと俺の話ってまだしてなかったよね。
じゃあ無理矢理っぽいけど、今言うね。きっと話すタイミングまで見失っちゃうから。
―――
彼女との出会いは、某乙女ゲーム。
それからイベントを通してお会いすることは多かったんだけど・・・。
「ねえねえ智一っ!!今度さぁ―――」
常に(同じく共演者の)関さんとおしゃべり。俺は殆ど見向きされない。
何回も何回も声をかけようとしたものの、あまりにも二人の仲良さそうな雰囲気にそれを壊すことも出来なかった。
別に恋愛感情とかではなく、人との繋がりを大事にしたいのが俺の信念。
だからこそとも子さんとも仲良くなりたかったけれども、気がついたら彼女は“いなくなっていた”。
そして同じタイミングで、ライブツアーを控えた永井さんが、ショックのあまり体調を崩された。
彼女を喪った悲しみと、叶えられなくなった“約束”に蝕まれて―――
(何とも酷い話だよね)
まるで他人事のように、そう思ってしまう俺がいた。
あの時その場にいたわけじゃないから、永井さんの心の傷については分からない。
けど、【知らない】からって俺も含めて他の人がその傷を癒すことは出来ない。
つい最近関わり始めた自分に、一体何が出来るというのだろうか?
(ま、やることを全力でやればいいよね)
とにかく、“先輩達”に泥は塗れないと、俺は俺のやれることへと向き直った。