現実(リアル)と空想 〜 パラレル 〜

□第一.五章 勘違いループ。
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―――某日 文化放送内












「檜山君、お疲れ様〜〜〜」
「っ!とも子さんっ!!?」














たまたま遊びに来ていた川上は、知っている後ろ姿を見つけ、声をかけた。











檜山は突然のことに思わず後ろに下がってしまったが、我に返って、話を続けた。














そして、ラジオ番組で対面があった両者は、そのまま雑談を楽しんでいた。
















「そう言えば、檜山君の所の部長って、女性だって聞いたよ〜〜〜」
「・・・誰から?」
「リョーちゃん」















『テニプリ』の話をしていたその時、檜山は顔色を失う。















「ど、どうしたの?檜山君」
「いや・・・、そいつ、俺の知ってた奴で・・・」
「えっ?」
















―――田中が数十年前に連れてきた無表情の子供。














友人であり、現田中の立場にいる結城比呂から彼女のことは色々聞いていたが、まさか―――
















(まさかそいつが来るなんて・・・!!)















「ひ、檜山君・・・?」















川上は不味かったかな?と声をかけたその時、


















空気を裂くような蹴りが、檜山を襲っていた。















「!!?」














誰かに蹴り飛ばされた檜山は、奇声を叫びながら元いた位置から大きく吹き飛ばされていた。















「檜山くんっ!!?」
















さすがに大男を吹き飛ばせるほどの威力を持つ人がいるのだろうか・・・。














しかも彼は『防御』において誰よりも優れている“所有者”だ。


















「ぐっ・・・、障壁張ってても、全く意味がねぇ・・・」
「檜山君!!!」


















ふと、誰かが、ふわりとその場に着地した。















着地したのは、その人が檜山を蹴り飛ばしたからだった。















「!」















群青色の短髪、細い腕や足。











歳からして自分よりは年下だと思う。













彼女はスカートの埃を軽く払うと、真っ直ぐに川上を見た。

















「・・・」














何処の誰だか知らないが、直感で『適わない』と分かった。
















冗談ではなく、身体中から。
















「―――貴女が、川上とも子さん、ですか?」
「!」




















しんとしていて、感情が全く感じられない。
















彼女はゆっくりと川上に歩み寄ると、続きを話す。














「いきなりで申し訳ありませんが、















―――貴女にはここで、死んでもらいます」
「!!」



















檜山を蹴り飛ばしたものと同じ蹴りが、川上目がけて飛んでくる。
















「っ!!」













「うがああああああああああっ!!!!!!」
「!」




















ふと、後ろから皆川が刀を握りしめてこちらへと走ってきた。



















「リョーちゃんっ!!」
「―――ちっ」
















彼女は皆川に気づくとその場を急いで後にした。



















「川上!!大丈夫か!?」
「うん・・・、けど、檜山君が・・・」
「ま、まあ、俺もなんとか平気だ。辛うじて“無効化”される前に障壁を張っといたから」
「“無効化”・・・?またそんなレアなもんを」
「さっきの、永井さんだよね?」
「永井?」

















檜山はゆっくりと立ち上がると、重い口を開いた。














「―――とも子さん。あいつが、俺の知ってる奴で、部長をやってる永井幸子っていうんですよ」
「えっ・・・、え゛えええええええっ!!!!!!!」
「えっ?何?知り合い?」

















―――それは、勘違いの始まり。
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