現実(リアル)と空想 〜 パラレル 〜

□第二章 8月、そして。
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―――2005年 8月



言われていた先行放送の日が、刻一刻と近づいていた。






「にしても、良かったわね、純ちゃんっ」
「・・・うん」







まだ、色々と不安定な部分もあるけれど、何とか春よりは落ち着きを取り戻していた。







『3年半を、お前にやるよ』






(送られた書類を見たら、本当、みたい・・・)







嬉しい。





失ったと思っていたのに、新たに得たものも大きい。








「おっ、まさやんぐぅ〜〜!!」
「っ!」







同じく呼ばれたのだろう、昌也が、私達の目の前にいた。





しかし、私に気付くと、視線を外して廊下を歩いていった。







「まさやんぐ、最終回以来、未だに純ちゃんとまともな会話、してないのね」
「・・・」










―――2005年 3月。







『どういう、こと・・・っ』







ただでさえ落ち込んでいたのに、“大切な人”からの急な発言。









『わりぃ・・・。暫く、連絡も、家にも来ないでくれ』
『何で!?どうして!?』
『・・・わりぃ』








結局、詳しい理由も教えてくれないまま、昌也は帰っていった。









―――それ以来、本当に連絡も来ない。




家に行こうにもいつもいないみたいで、全く会えなかった。








(昌也・・・、私のことなんて、もうどうでもいいんだ・・・)







それが余計、心を傷つけていく。





せめてもの救いも、私の中から消えてゆく。






―――消えちゃう・・・。





全て、私の中から、消えていっちゃう・・・。







まるで、言いようのない漆黒は、見えないところで私を浸食していく。












―――









「・・・純ちゃん?純ちゃん!どうしたの!?」









ゆきちゃんが私の異変に気付いて、肩を大きく揺すった。







それで何とか現実に戻ってこられた私は、ゆっくりとゆきちゃんを見た。










「・・・相当酷いみたいね・・・」









まるで、会った初日の岡野のようなことを言われた。






私の何処が酷いのだろう。








まるで“刃物”で引き裂かれたようなこの私を・・・。








・・・、“刃物”?







何で今、“刃物”に反応したんだろ。








何かこう、はっきり形になりそうで、ならない。このもどかしさ。












(何なんだろ・・・)









10年前から、抱いていた不思議。









(私、どうしちゃったんだろ・・・)







もう何も分からない私を、川上はただ、静かに見つめていた。
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