現実(リアル)と空想 〜 パラレル 〜
□序章
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大切なものも、居場所も、全て失った―――
―――
2005年 3月
失意に暮れる私に、“彼女”は、ただ、ひっそりと佇む。
何かを言っているようにも感じたが、耳に全く入ってこない。
虚ろな目を弱々と“彼女”に向けると、“彼女”は視線に気付き、やんわりと微笑む。
そっと、口を動かした。
『大丈夫だよ―――』
“彼女”は―――、川上は、そう言って私に手を差し出した。
大事なものを失った
大切な人も失った
大好きな場所も失った
私は、まるですがるかのように、そのまま川上の手を力無くとった。
―――そっか。
思えば、あの日から全てが始まっていたんだな―――