現実(リアル)と空想 〜 パラレル 〜 2

□第四章 Re:start 3 〜 晩春 〜
1ページ/9ページ






―――




2012年 3月7日 深夜2時30分







一人の男性が、痺れを切らしたように皆川へと詰め寄っていた。








「もしもし!!?もしかして俺の存在忘れてますか!!!?」
「い、いやいや〜〜〜、忘れてないよぅ。だってDすっげー気配漂わせているし」









“D”ことニューフェイスの小野は、焦った様子で皆川に詰め寄る。









実は最初から気付いていたのだが、田村のことが心配でスルーしていたのだった。











「全く貴女という方は。ほんと勘弁してくださいよ全くもう」
「何で私怒られなきゃいけないの・・・。だったら普通に出てきて良かったよ!?」
「いやいや、それじゃ何だか馬鹿みたいですよ」









訳の分からん会話を繰り広げる中、小野は急に距離をとった。










「―――まあ良いですよ。俺が貴女に言いたいことはこんなことじゃないですし」









空気が突然変わり、皆川も思わず構えた。











刀は顕現できないため(田村が険しそうな表情で睨んでいるのを視界の隅に掠めた)、ある程度の体術で。









(えっ!?まさかDも!?)









“所有者”特有の気配を察して、眼を細める。









「戦闘状態ですか、じゃあこっちも――――――」









構えようとした瞬間、誰かが小野の頭を勢いよく殴り飛ばした。










「・・・は?」









突然のことに呆気にとられていると、そこに現れたのは杉田だった。











手には武器の“攻略本”が握られている。これで殴ったのだろう。










「ふい〜〜〜っ。全く、大ちゃんいきなり暴露は不味いでしょ」
「す、杉田さん、何でここに?」
「いやぁ、お恥ずかしい話、今週の忘れ物を取りに来ただけですよ。傘を忘れてしまって」
「か、傘・・・?」
「いや良かった、誰にも持って帰られてなくて。いや喜ぶ所じゃないんだけど」










ノリつっこみを繰り広げる杉田に、皆川は?が消えない。









「ああすみません、仕事の邪魔になってましたね。彼はこちらで回収していくんで、続きをどうぞ」
「いやもう終わってますよ・・・」
「あ、そうなんですか?そりゃ好都合」











気を失った小野を引き摺るように連れていった杉田を、ポカーンとしながら見送った。










(なっ、よく分かんないけど、結局何だったんだろう?)









佇まいを直した皆川に、案の定田村が近付いてきた。









「何とか刀を使いませんでしたね」
「ええ、別にDもこれと言った殺意があった訳じゃないし。それに、“契約”されてますしね」
「そうですよ。忘れないで下さいね」









そう告げると、田村は本社へと帰っていった。











(・・・良かった、顔色は良さそう)









先月に比べると、田村の顔色は幾分か良くなっていた。









だがしかし、本腰が入っていないのは相変わらずだった。












(美佳子もどうしたらいいのか分からないって言ってたし、あと3回で私に何が出来るか)











この間、3月の番組表を貰ったのだが、最終週に特番が入ると書いてあった。










しかもそれが卓球大会らしい。










(何か毎年やってるらしいけど、流石テレ東って感じだわ)










よほどのことがない限り、スケートやバレーのようにスポットが浴びない。










ここら辺が全国局から外れたローカルならではの構成なのだろう。












(これがどう出るか、かなぁ)









しかしその場合、放送時間どうなるんだろ?と考えた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ