03/23の日記
23:53
整調・清聴。
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◆追記◆




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「―――てなわけで、直純しゃん、ここまでの状況をおさらいしみゃしょう。みゃぜ私達が、文化放送と宗教戦争を勃発してるのか?を」

「えっとぉ、確か、きっかけは俺の中にいる“アマテラス”だよね。完全発現したことが原因で、「異教が領域内に紛れ込んだ!!今すぐ出てけ!!」ってなって、“賛美歌”だったりチョイチョイこそい嫌がらせをしてきてんだよねぇ・・・」

「アマテラスが関わる“神道”は、「人類皆、死んだら神」思考でもあり、「日本そのものを作った神」でもあり、「信者がめっちゃ多い」と簡単に言えばこういう感じですね。対してカトリックは一神と聖書が全てですから、神道の考えとは合わみゃいんですよぅ。そもそも八百万も神がいること自体、赦し難いとなってみゃす」

「当初は誰もが(何か不快だなー)位の感覚だったけど、俺との関係性を突いてきて、特に関係性が強いキャストに対しては賛美歌のダイレクトアタック!!をぶちかましまくってきてんだよね。不協和音で鳴り響いていくから、最悪の場合耐え切れずに意識を失う人も出てきたんだよね」

「その中でも、とも子しゃん(※実はカトリック)にまで反感を買ってしまった竹ぽんと美佳子ちゃんへの賛美歌被害は容赦なく、一歩間違えると死ぬほどの被害を受けみゃした」

「それで、流石にそろそろこの問題を解決しないとキャストへの被害が増えてって、死人が出てもおかしくなくなったから、檜山さんが何とか調整をして、俺と永井さんを組んだんだよねぇ。2人同時に相手の懐に入ってしまえば、別々への嫌がらせは無いだろうと言うことで」


「実際、ブースに入るとブース外にいる直純しゃんの存在を認知出来ないと言う嫌がらせは無く、“賛美歌”が響くと言う嫌がらせもみゃいので、こちらの思惑通りにはなりみゃした。―――で、それを踏まえた上での1週目の話。事情があるんで、私視点で語りみゃすね」





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「いきなりやらかしよったで・・・」
「盛大に噛みみゃしたねぇ」




何とか良いところまで行ったと言うのに、肝心要なところで直純しゃんは嚙んだ。


私は面白ーいと思ったんですけど、それが余計に追い打ちをかけてしまったらしい。みゃぜだ。



「さち―――、永井さんはもうちょい空気よも???ねぇ???」
「わざわざ言い直さなくてもいいのに。そのまま普通にサチンって呼んでいいですよーぅ。ウェルカムです!!」
「・・・はあー」



みゃんと言うか、直純しゃん、決まった時からスンゴイ嫌そうな空気を感じるんですが、まさか共演NGでした?



(あー、そういえば、直純しゃんって深く関わった女性が事ごとく無期限休養だったり鬼籍だったりで、女難(厄介な死ぬオプション付き)があるんでしたっけ)



とか言う私も、去年はまーあ見事に王道な死亡フラグを回収してしまったんで、直純しゃんのトラウマを増やしただけですよね、どう考えても。

笑顔で「大丈夫」って言ってから死ぬって、本当にあり得る。




・・・そろそろ“本題”に進まないとと、未だに顔を手で覆って隠してる直純しゃんに近づこうとして、嫌な感じがした。




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「・・・ちょい待ち。(死ぬオプション付き)って、不謹慎の度合いが酷すぎんじゃね?」
「駄目でしたか!!?でも、大体死んでみゃすよね!!?」
「否定出来ないけど、オプションはやめよ?取り外したくても取り外せねぇから、プリセットにしとこう」

【同じですよ・・・】

「戻りみゃーす!!話を戻しみゃす!!」



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直純しゃんも気づいたのか、左右を確認した。



「どうやら、“ジワジワ”攻めて来みゃしたね・・・」
「収録中は何もしてこなかったけど、終わった瞬間に“ジリジリ”来てんねぇ・・・」
「ジリジリ。」
「ジワジワ。」


お互いに感じた【ジ】が見事に一致してないことは置いておいて、とりあえず身を構えた。



「気をつけてください。何を仕掛けてくるか分かりませんから」



直純しゃん、と言いかけて、突然取り巻く空気が変わったことに気づいた。



―――目に映る姿は直純しゃんですけど、“中身”が違う。




「・・・何かしらね、このネットリとした陰気は。さっきからチクチク刺してきて、不愉快だわ」



声もそのままに、女口調でつまらなさそうに振る舞うそいつは、



「おい、何で出てきた、“イザナミ”」
「ふふっ、貴女って、私に向ける殺気を包み隠そうとしないわね。愛おしい人の子」
「クソみたいなことを言うな。直純さんはどうした」
「ちょーっと眠ってもらったわ。何となく“コツ”は掴んでいるから」




(こいつ、まだ主導権を奪おうとしてるのか!!?“聖杯”で浄化したとしても、穢れの根本は消えないのか・・・)




今になって嫌がらせが出てきているのに、ここに来て直純しゃんの主導権を奪おうとしたイザナミまで出てきたら、私はどうしたらいいのか。



などと考える間もなく、私はイザナミに攻撃した。が、それは1ステップで舞うように軽やかに避けられる。




「危ない危ない。いきなり攻撃をして、この身体が傷ついても良いの?」
「黙れ屑神。お前こそ、早く消え失せろ。今度は確実にお前を消すぞ」
「まあ、怖い」



今度は2ステップで、一気に私との距離感を縮めてきた。

そして、割れ物に触れるかのように、指で人の輪郭をなぞってきた。




「この器がどう思っているかはともかく、私は貴女を気に入っているのよ?珍しく原形を残してでも黄泉に連れて行こうとしたんだから」




私を仕留めようとした時の表情を向け、イザナミは嗤う。直純さんがしない表情をするこいつに、嫌悪感が増してゆく。


感情を消した表情で、その手を払いのけた。




「―――本当に、気持ち悪い。触るな」




本気の拒絶反応を示すと、イザナミの笑顔が僅かに歪んだ。

予想外だったのだろう、静かに手を引っ込めると少しだけつまらなさそうに鼻を鳴らした。



「・・・まあいいわ、とにかくこの陰気をどうにかしましょう。うっとおしいったらありゃしない」
「どうするって、どうする気なんだ?」
「どうって、“私のやり方”でやらせてもらうわ」




あっ、今、もの凄く嫌な予感がした。



生前は夫のイザナギと共にこの国を作った愛妻気質全開だったけれども、死んで黄泉の国に堕ちて、泣きながら探しに来たイザナギに朽ち果てた姿を見られて逃げられて以降は、【死】に対して強い力を持っている。



死んだ神が堕ちる黄泉を統べるイザナミのやり方なんて、どう考えてもここと相性が悪―――。



「あああああああっ!!!!?何か床がズモズモしてる!!!!!?おいやめろ!!お前の領域に引き摺りこもうとすんな!!」
「この方が手っ取り早いでしょう?神の子とか言われても、私にしたら所詮は“人の子”だもの」
「だから喧嘩を売んな!!ああああっ!!文化放送の嫌がらせも増した―――っ!!」





イザナミがやろうとしたのは、“文化放送ごと黄泉に引き摺りこむこと”だった。


勿論そんなことをすれば、向こうは本気で妨害してくる。不協和音と聖書のガンガンが私の頭にぶつけられてきて、まともに立つことさえ出来なくなった。




(こいつ!!(こうならない為に)と考えていたこっちの裏をやろうとしてるな!!?)




動けなくなった私を他所に、イザナミは軽やかに舞いながら侵食を続ける。


しかし、軽やかな舞いも、空間侵食も、パソコンがフリーズしたようにピタリと止まった。




「みゃっ・・・?」
「なかなかに早いお目覚めだこと。“あの子”に叩き起こされたのかしら」「誰が勝手にこんなことをしろって言った。おい」



1人の身体で男女のやり取りをする不可思議な光景を見つめていると、舞いの状態で固まっていた右手を、唯一動けるようになっていた左手で強くはっ叩いた。



その瞬間、床のズモズモも漂っていた死の空気も一気に消え去った。相手が引いたと思ったのか、悪化した嫌がらせも緩和する。



直純しゃんは申し訳なさそうに、立ち上がりかけた私を見た。




「ごめん永井さん、こいつ、一瞬の隙をついて出てきやがった・・・。アマテラスと“あいつら”が「早く起きないと大変だ!!」って叩き起こしてくれて、何とか間に合ってよかったぁ・・・」
「ほんと、ギリギリセーフでしたよぅ・・・。建物ごととなると、全く関係ない人達まで引き摺りこむ羽目になりみゃすからね」




黄泉の国は【神】しか来ることが出来ない。そんな中に【人間】が入ってしまおうものなら、肉体の原形が留められない。全て肉塊になってしまう。



そんなことなど一切気にせず、ただ「自分が攻撃されて、不愉快だった」と言う理由だけでここにいる無関係者を巻き込むところだった。





「・・・はぁ、やっぱこいつ、一回きつく言っとく必要があるな。不快だからって理由でこんなことされたら、和解どころの話じゃねぇし」
「そうですね・・・。とりあえず今日は、もうやめときみゃしょう。さっきのやらかしのせいで、結構大ダメージを受けたので・・・」
「大丈夫?歩ける?」
「あー・・・、視界が少し揺れて、ふらつきを感じみゃす。三半規管がやられてみゃすね・・・」
「どんだけ強い打撃を受けてきたんよ・・・」




**



「―――と、1週目はこんな感じでした。イザナミの発現はロクなことが無いですね!!」
「しかもその理由が、「この陰気、超ムカつく」だもんねぇ・・・。それだけの理由で、局内にいる他の人まで巻き込まそうとすなっ!だわ」
「もしイザナミが勝った場合、私達以外の”文化放送内にいた全員”が肉塊になってみゃしたよぅ・・・。どれだけいるのかは知りみゃせんが、数十人が行方不明扱いになって大騒動になりみゃすし、分からないイザナミではなく、直純しゃんがやらかしたせいでこうなったと見なされて、最悪、即処刑ですよぅ・・・」
「即!!?反論の猶予も無し!!?」
「場合によりみゃす。ただ、本社も組織も【あなたがやらかさないことを前提】の行動をしてみゃすから、建物ごと大量の行方不明者発生(しかも既に死んでる)の騒動みゃんて起こしたら、一発アウトですよぅ」
「良かったああああっ!!ギリギリで止めることが出来て!!」

【ほんと、もう少し考えて行動してほしいですよね。あなたにもこの方にも迷惑をかけて、物事が解決するわけないんですから】
「お前もお前で、ちゃんとイザナミが暴走しないように注視しろよ、駄神」
【なぁーっ!!?】
「はいはい・・・。分かったから」

2022/03/23 23:53
カテゴリ: SS。
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