現実(リアル)と空想 〜 パラレル 〜
□第五.五章 駆け廻る。
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―――2010年 3月
川上は、日本ではなく、ドイツにいた。
「さっぶぅぅぅっ!!!!!けど、空気美味しい〜〜〜〜!!」
目の前に白く染まる壮大な景色を見つめ、ほうっと溜息。
「絶景って、このことかあ〜〜〜v」
「―――おい!!川上っ!!」
川上とは別ツアーで参加していた皆川・甲斐田の両者は、やっとのことで川上と合流した。
「ってか、さぶっ!!今何℃なのよっ!!」
「えっとぉ・・・、−13℃って」
「ちょっと待て。一気に温度差がああああっ!!!!!」
「リョーちゃんが勝手に言ったんでしょよ。
―――あっ!マフラー締めないでっ!!ぐるじぃ・・・!!」
「純子、そこで止めなさいな」
甲斐田からの制止を受け、皆川はやっと川上を解放した。
「・・・はあっ、死ぬかと思ったよ・・・」
冷凍庫にいるような空気を胸一杯吸い込むと、余計呼吸が出来なくなりそうになる。
「にしても、ローテンブルク、か」
「ロマンティック街道とは言われているけど、拷問器具がある犯罪博物館ってのもあるんだって」
「甲斐田さん・・・、怖い部分だけ取り上げなくても・・・」
「あっ!!後で市壁の上れるところに行ってみよ!!」
「リョーちゃんは私と違うツアーだよね・・・。いいの?一緒にいなくても」
「他の人なんてどうでもいいわよっ!それよりも―――」
白い息を吐き出し、遠くを見つめ目を細める。
「嫌な予感がする・・・」
「そんな田中さんみたいな。―――まあ、さっきから誰かに付きまとわれている感はしてるけどね」
川上は白い息さえ見せないように、皆川と甲斐田に耳打ちする。
「またあいつなのか?」
「・・・違う。別の“所有者”かもしんない」
「その人も“転生者”ってこと?」
「いや・・・、私は“転生者”になっている人を全て把握してる。どんなに姿や形を変えても―――」
そこで、マフラーを翻し、マルクト広場まで歩き出した。
「何してるの?付いてきなよ」
「お前・・・、一気に強気だな」
「違うよ。リョーちゃんも甲斐田さんも、危ないから。市壁内に入ってしまって、連絡なり行動なりとらないと」
引っぱられるように、二人は川上の後を追いかけた。
ふと、先程まで3人がいた場所に、二人の人影が現れる。
「あの方達が、リーダーの言っていた“所有者”と“転生者”ですか?」
紳士スタイルの老人が、隣にいた女性に声をかける。
「そうですね。
・・・これでやっと、リーダーの願いを叶えられる―――」
二人は再び、姿を消した。