恋海short-story
□女の子注意報
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ひよりと結ばれてから二週間。
俺はあれから一度もひよりに手を出していない。
ひよりは初めての行為でかなり痛がって、翌日は辛そうだったから。
無理強いはしたくなかったし、船室でって言うのが気が引けた。
大体部屋には鍵も付いてねぇし、何時誰が入ってくるとも限らない。
何より、ひよりのあの声を、他の奴らに聞かせたくない。
俺は、航海中には手を出さないと、密かに決めていた。
だから…
「ナギ!陸が見えてきたよ!!」
港に停泊出来る事を、俺は密かに心待ちにしていた。
お前は久しぶりの陸地に無邪気にはしゃいでいるが、俺のこんな複雑な気持ち、分かってんのか?
「う〜ん、飲まされたぁ…」
酒場での夕食時、いつも以上に船長に飲まされたひよりは、宿に帰ってくるなりベッドに突っ伏した。
普段港に停泊する時、俺達は適当な宿に泊まる。
その時は、手狭な船と違って一人一部屋きちんと割り当てられる。
当然、俺とひよりも別室。
今は、ひよりに割り当てられた部屋に、酔ったこいつを送ってきた。
ひよりは女だからか、宿から割り当てられた部屋は、俺達男とは一つ違う階…
こんな美味しいチャンス、見逃せるはずがねぇ。
「ひより…」
俺はベッドに腰掛け、俯せで寝ているひよりの頬に触れる。
ひよりはぽやっとした顔で俺を見て、ふにゃっと笑った。
(可愛すぎだろ…)
ひよりの身体を仰向けに転がし、俺も横に寝てひよりをギュッと抱きしめる。
ひよりも、俺の背中に腕を回してきた。
背中に回した手を腰に滑らし、ウエストラインをそっとなぞると、ひよりは身をよじった。
そのまま腰を撫で、指全体でツーっと背中をなぞるように撫で上げ、今度は二の腕に指を這わせて下る。
背中をなぞられた時に見せた僅かな反応を、俺は見逃してない。
抱きしめながら、両の掌でイヤらしくひよりの背中や腰をまさぐれば、「んっ」っというくぐもった吐息を漏らし、身体をぴくりとさせた。
「ナ…ギ…」
熱の篭った声で呼ばれて、ゾクっとした。
そっと身体を離してひよりの顔を見れば、酒のせいだけではない潤んだ瞳で見つめられて…
俺は肘を付いてひよりの顔を上から覗き込み、その柔らかい唇に吸い寄せられた。
「んっ…はぁ…」
今だ馴れない深いキスに、それでも必死に応えようとするこいつが愛おしくて、俺は夢中で口付けを送った。
小さな舌を掬いとり、絡め合わせて、存分に口内を犯すと、最初は俺の肩口を掴んでいたひよりの小さな手が、俺の背中に回された。
すると、さっき俺がしたように、ヤラしい手つきで俺の背中をまさぐってくる。
こんな風に、何も知らなかったひよりが、俺が教えた通りに反応を返してくることに、身震いするほど興奮した。
もう、キスだけじゃ足りねぇ。
早く抱きてぇ。
それでも俺は、逸る気持ちを必死で抑えて、ひよりの首筋にキスを落とした。
ブラウスのボタンに手を掛けて、一つ一つ、ゆっくりと外していく。
徐々にあらわになる白い肌に、順番に口付けを下ろしていく。
総てのボタンを外し終えると、そっと前を開いて白い下着をあらわにさせ、その谷間に、ちゅっとわざと音を立てて吸い付いた。
下着越しに優しく胸を揉むと、ひよりは恥ずかしいのか顔を反らせて、真っ赤にしてる。
腕を伸ばしてベッドサイドのあかりを極限まで絞ってやると、幾分か身体の力が抜けたようだった。
「ナギ…大好き…」
「…俺も…」
もう一度キスをしながら、俺は片手で背中のブラのホックを外し、直接胸に手を滑らせた。
柔らかな感触に夢中で掌を這わせると、ひよりの胸の蕾が硬く持ち上がってくる。
「…んっ!」
親指と人差し指でその蕾をキュッと詰まんでやると、ひよりは可愛く声を漏らした。
そのままコリコリと転がすと、身体をピクンと震わせる。
俺はキスを止めると、胸の蕾をペロッと舐めた。
「あっ!」
その刺激に、ひよりの腰が浮く。
そのまま舌で愛撫を続けると、悩ましい喘ぎを上げた。
「ん…ぁぁ…ナ…ギィ…気持ちいい…」
…気持ちいいって…
思いがけないひよりの言葉に、俺の下半身は痛いくらいに反応した。
ヤバい。
なんで好きな女相手だと、こんなに余裕がねぇんだろ、俺。
俺は膝立ちで立ち上がり、シャツを脱いだ。
ひよりが急な俺の動作にびっくりしたような顔をしているが、お構いなしにひよりの上半身に纏わり付くブラウスとブラを腕から抜いて脱がせる。
そしてスカートのファスナーに手を掛けて、足から引き抜こうとすると、そこで初めてひよりが抵抗を見せた。
「ま、待って、ナギ!!」
慌ててスカートを引っ張りあげようとするが、そんな抵抗もろともせず、俺はスカートを脱がせて下着一枚の格好にさせた。
ひよりは胸を隠すように手を胸の前でクロスさせて、足をピッタリ閉じてるが、そんな格好が俺を更に煽ってるだなんて、思いもしてないんだろうな。
「もう、限界」
俺はそう言って、ひよりの下着に手を掛ける。
「ダメー!!ダメなの!!」
ひよりはさっきよりも更に激しく抵抗し、俺に下着を脱がされまいと必死に俺の手を掴んだ。
「ここまで来てダメじゃねぇだろ!」
「ダメなの!!今日はダメ!!」
下着を掴んだ俺と、俺に下着を脱がされまいとするひよりの攻防が続く。
何なんだよ一体!
「…なの」
「は?」
「女の子の日なの!!」
…
……え?
「女の子…の…?」
俺は固まり、ひよりの顔を見る。
ひよりは恥ずかしさから、両手で顔を覆い、コクンと頷いた。
嘘だろ…
俺は一気に力が抜けて、ひよりの上に倒れ込んだ。
生理か?
生理なのか!?
なんでよりにもよって今日!?
いや、それより…
そう言う事は始める前に言ってくれ!!!
「ナギ…、ごめん…ね?」
倒れ込んだままぴくりともしない俺を気にして、ひよりが俺の頭を撫でる。
はぁ。
こいつには、分からないんだろうな。
男の生理現象なんて…
この状況でどうやって処理したらいいのか、俺にだって分かんねぇ。
「お前が悪いわけじゃねーよ」
最後の優しさを振り絞り、俺はひよりに抱き着いたまま言葉を発した。
まだ反応してる自分自身を自然に鎮めるべく、俺は夜風に当たりに行こうとひよりから身体を離そうとする。
そうすると、ひよりが俺を離すまいと、腕に力を込めた。
「おい!」
「このまま、ギュッとしてて?」
潤んだ瞳に、上目遣いでそう言われ…
身体には裸のひよりの肌をモロに感じて…
畜生…俺は何度こいつに生殺しにされたら気が済むんだ…!!
数分の後、ストンと眠りに落ちたこいつを腕に抱きながら、こいつと付き合うには今まで以上の忍耐力が必要かもしれねぇと思った、5月の夜だった。