恋海short-story

□夜明け前
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ゴロン

ゴロン




深夜、私は何度も何度も寝返りを打っていた。

ナギのいないベッドは、広くて寒くて落ち着かない。

つい先日までは、私はベッドで、ナギは床で、別々に寝てたのに。

想いが通じ合ったあの日から、私達は一緒にベッドで寝るようになって、その暖かさと、安心感を知ってしまったから。

一緒に寝るようになって初めてのナギの不寝番の夜、私は落ち着かなくて、一度眼が覚めてしまってから、なかなか寝付けずにいた。



ナギの枕を抱きしめて、スリスリしてみたり、羊を数えてみたりしたけど、全然ダメだ。もう寝られない。


(そうだ!いいこと思い付いた!)


私はベッドから起き上がると、キッチンに向かった。







「ナーギ」

私は、二つのマグカップを手に、見張り台への階段を上がった。

「ひより。どうした?」

ナギは私が転ばないように、マグカップを一つ持って、もう一方の手で私の手を持って引っ張ってくれた。

「へへっ。なんか寝付けなくなっちゃって。差し入れだよ」

寒いだろうと思って、私はココアを作って持ってきたんだ。

「サンキュ。ほら、寒いだろ?こっち入れ」



ナギはふんわり優しい笑顔で喜んでくれて、私を毛布で一緒に包んでくれた。ナギの膝の間に挟み込まれるような体制になって、背中にナギの体温を感じた。

「あ、上手い」

ナギはココアを飲んでそう言ってくれた。

「ブランデー?」

「当たり!ナギ、甘いのはあんまり好きじゃないだろうから、砂糖は入れずにブランデー入れてみたの」

私のはもちろん普通の砂糖入りのココアだけど。

二人でフーフーしながら、黙ってココアを飲んだ。





何も見えない暗い海。

波の音だけだ聞こえてくる。

私達の間に会話はないけど。

二人で一緒にいるこの空気が好き。

何も言わなくても、想いが通じ合っているのが分かっているから。

一緒にいるだけで、心がじんわりと暖かくなってくる。





ナギも、同じように思ってくれてるのかな?





ココアを飲み終えて、私達は波の音に静かに耳を傾けていた。

頬を刺す風は冷たいけれど、毛布の中の体はぽかぽかだった。



「暖かいね」

と私がぽつりと呟けば、

「ああ」

と短い返事が返ってくる。

そんな心地いい空気にまどろんで、ナギに背中を預けるようにもたれかかると、ナギはギュッと抱きしめてくれた。



「きゃっ!?」



ふと、ナギが私の耳たぶにキスをしてきた。
驚いて振り返ると、今度は唇に軽いキス…

ナギの顔を見ると、普段あまり見せてくれない、極上の甘い眼差しで微笑んでいて、私はもうその笑顔だけで溶けてしまいそうだった。

そして、

そのまま、二度目のキス。

今度はさっきみたいに軽いキスじゃなくて、深い深い、大人のキスだった。

私はまだこんなキスに慣れてなくて、ナギの舌を受け入れるだけで精一杯で、すぐに頭がボーッとしてくる。

何も考えられない。

ナギだけを感じていたい。

ナギのキスがあまりに情熱的で、身体の力が抜けちゃうよ…



体重をナギに全てを預けて、ナギの舌に応えていると、ふと、ナギの手が私の胸をネグリジェの上から揉んできた。


「っ!?」

私は驚いて唇を離そうとしたけれど、ナギがそうさせてくれなかった。

「んんっ」

ナギがネグリジェの胸元のボタンをゆっくり外してる。

え、まさかここで?

抵抗する間もなく、ナギの手が胸元に滑り込んできて、直に胸を揉んできた。



「やんっ!」



堪らずに唇を離した。

ナギはお構いなしに私の首筋にキスをしながら、胸を愛撫してくる。



「ああんっ」

両方の乳首をきゅって摘まれて、思わずエッチな声が出ちゃった。

恥ずかしいよー!

でも、ナギの指はそんなのお構いなしに敏感な部分を責めてくるから、私は快感を抑えるのに必死で、声を出さないように小さく喘いだ。



首筋に、ナギの粗い息を感じる。



ナギも、興奮してるの…?



そう思うと、なんか私はますます淫らな気持ちになって、声を我慢出来なくなってしまった。



「ひより…」



耳元で、ナギが私の名を囁く。

そんな行為だけで、身体がぴくってなるほど感じるなんて…



これ以上何かされたら、私、どうなっちゃうの?



両想いになってから、一緒に寝るようになって、もう何度もキスはしたけど、私達はまだ深い関係にはなっていなかった。



一度、キス以上に進みそうになった夜があったんだけど、途中でハヤテさんの邪魔が入った。

船室には鍵がないから、いつ誰が入ってくるかわからない。
ノックをしてから入ってきてくれるのは、ソウシさんくらいだから。

ナギは、我慢してくれてるんだと思う。



でも、今。



ナギの手は私の身体を隅々まで撫で廻して…

その息は粗くて…

私も、何が何だか分からないくらい興奮してて…


このままここで、最後までしちゃうのかな?



ぼんやりとそんなことを思った。



その時…



するりとナギの手が私のネグリジェの裾から忍び込む。

ふくらはぎから太腿の内側を撫でられて、今まで誰にも触られたことのない部分へナギの指が到達した。



ピクン!



私の身体が跳ね上がる。



「すげー濡れてる…」



耳元で囁かれて、私はカッと赤くなるのが分かった。


ナギの指が、下着の上から私の秘部をなぞると、ヒンヤリ冷たい濡れた感触がした。

感じると、私こんなに濡れちゃうの!?

下着の上からクチュクチュされて、

「ああっ!」

と堪らずに、声が出る。

ナギの指が、下着の脇から入ってきて、直に触られた。

ヌルヌルとしたその液を、ナギの指が私の敏感な部分へクリクリとなすりつける。

何、これ。すごく気持ちいい。

開いた片手で乳首を刺激されて、首筋にはキスの雨を降らせて。

私は、身体がピクピクするのも、エッチな声が出るのも、もう抑えられなかった。





もう、どうなっても、いい。





白み始めた空の下。

狭い見張り台の上。

毛布の中で。

邪魔する人は誰もいなくて。

ナギに全てを預けようとした。




ナギは私を振り向かせて、膝立ちにさせ。

私の下着をそっと下ろす。

見つめ合って、キスをしようとしたその時、私の視界の隅に入ってきたのは…



一隻の、小さな船。



いや、小さい船が、だんだんと大きくなってくる。


近付いてくる、その船の船頭には。




「…真珠ちゃぁぁぁん!!!」


シリウス号に向けて大きく大きく手を振ったロイ船長が立っていた。



「なな、ナギ!あ、あれ!」

「ちっ!」

(舌打ち!?)

「あいつ…千枚におろしてやる!!」




ナギは立ち上がって、すごい勢いで甲板へ駆け降りていった。



「ひより!みんなを起こせ!戦闘準備だ!」

「はっ、はい!」

私も慌てて立ち上がり、下へ降りようてした。



でも…なんかスースーするような…



「!?」



下着、ナギが持っていっちゃった!!

私は急に恥ずかしさでいっぱいになったけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないのは分かってる。



もう!ロイさんなんか大っ嫌い!!!



私はノーパンのまま皆を起こしに船室に向かった。






ナギとの初体験は、まだまだ遠そうだった。






fin

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