恋海short-story

□ナギの苦悩
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朝食の仕込みを終えて部屋に戻ると、ひよりは腰を押さえてベッドに突っ伏していた。

「あ、ナギしゃんお疲れ様です〜」

ベッドから起き上がろうともせずに、話し掛けてくる。こいつにしては珍しい怠慢な態度だ。

「どうした?」

「はい、ちょっと腰を痛めちゃって…」

「腰を?」

「はい、昼間酒瓶を運んだ時に…」

そういえば昼間、倉庫から食材を持ってこさせた。酒瓶は重いから後で俺が運ぶと言ったのに、こいつは無理して持ってきたのだ。

「だから俺が運ぶと言ったのに」

「すみません…」

イタタ…と、辛そうなひより。

「揉んでやろうか?」

責任の一部は俺にもあるなと、罪悪感を感じてそう言うと、

「いいんですか!?」

とひよりは嬉しそうにベッドに真っすぐになって体制を整えた。

ベッドに乗ってひよりに跨がり、腰に手を掛ける。

(細っせー)

ひよりの腰は、俺の両手で包み込めそうなほど細かった。この華奢な腰で、よくあの酒瓶のケースを階段を登って運んできたものだ。

「もう無理すんじゃねーぞ」

腰を押してやりながら注意すると、はーいという素直な返事が返ってきた。

「イタタ…ナギさんもっと優しく押してください。」

「あっ、悪い」

女をマッサージなんてしたことがないから、力加減が分からなかった。
さっきよりも大分ソフトに押してやると、

「気持ちいいですぅ〜」

ととろけそうな声をひよりが出す。

上から下へ、下から上へ、場所を変えて押してやるたびに、

「あっ…」

とか

「んんっ…」

とか

「ぁっ、そこ、いぃ…」

とか、



……

………

(変な声出すんじゃねーよ!!!)

俺が与える刺激にいちいち反応して、やけに悩ましい声をあげやがる。
普段はこれっぽっちも色気なんかねーくせに、なんなんだその色っぽい声は!

「あっ、ナギさん、そこ…気持ちいぃ…」

(やべっ…)

まさにピンポイントを刺激したらしい瞬間に上げたひよりの声に、俺のアレがピクッと反応した。

俺はバッとひよりの上から退く。

「ナギさん?」

いきなりの出来事に事態を飲み込めていないひよりが不思議そうに顔を上げるが、俺はひよりに背を向けて、

「ド、ドクターに貼り薬貰ってきてやる!」

と冷静を装って部屋から出た。







甲板で夜風に当たり、自身を静める。

(くそっ、なんで俺があんなガキに反応しなきゃなんねーんだ)



一先ず落ち着き、ドクターの部屋へ向かう。ノックをして事情を説明すると、医務室から貼り薬を持ってきてくれた。

「ありがとうございます」

礼を行って部屋へ戻ろうとする俺にドクターは、

「いい声だったね、ひよりちゃん」

と、クスクス笑って言いやがった。

(ちっ、筒抜けかよ)

本番は気をつけなければ、という考えが真っ先に浮かんだが、本番て何だ?とすぐに自分の考えを打ち消す為に首を振る。

あんなガキとなんてありえねーだろ。



「貰ってきてやったぞ」

ひよりはまだベッドに俯せになったままだった。

「ありがとうございます」

「ほら」

ひよりに貼り薬を渡してやったが、ひよりは暫く考えて、

「あの〜、ナギさん」

「なんだ?」

「貼って貰えません?」

と言いやがった。

「はぁ?」

「だって、自分じゃよく見えないし、貼りにくいんですぅ…」

まぁ確かに、貼ろうと思ったら腰を捻るわけだし、貼りにくいだろうな…

(この俺にそんなことまでさせるなんて。ほんとガキのお守りは懲り懲りだ)

俺はひよりから貼り薬を受け取り、ペッとフィルムを剥がす。

「どの辺だ?」

ベッドに腰かけながら言うと、ひよりはブラウスを捲り上げて肌を見せた。
普段見ることのない、細い腰があらわになる。色白のこいつだが、普段衣服に隠されたその部分は、一層透き通るように綺麗だった。
ガキだガキだと思っていた身体も、腰から尻にかけてのラインはまさに女特有の柔らかい曲線を描いていた。
その肌を見て、静まっていた俺のものが、再び反応する。

「うーん、この辺りですかね?」

ひよりは俺の動揺に全く気付かず、痛い場所を摩りながら俺に示す。

ペチンとその場所に貼り薬を貼ってやると、俺は再び夜の甲板に夜風を浴びにいった。

そして、二度とひよりに重い荷物は運ばせないと誓うのだった

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