ジョジョ(スタプラ・承太郎etc)
□花京院と承太郎
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季節は、秋終盤。
青々としていた木々の葉も赤や黄色に染まり、地面には枯葉がヒュンと風に吹き飛んでいた。高校へ行く道もすっかり冷え込んで、マフラーの存在に感謝しつつ学校へと歩いてく。
「くしゅんっ」
ゆうさは冷たさにくしゃみをした。すぐに目線だけでチラチラと辺りを見渡す。
(ただの風邪かな…?)
それとも誰かが噂でもしてるのかなどと考え教室へ向かった。
「おっはよー!!」
教室へ着くとクラスメイトが声をかけた。いつも一緒にいる友人だ。今日はやけにテンションの高い挨拶だったが、よく周りを見ると皆何処と無くテンションが高い。
「おはよ、なんかあるの今日」
気になって聞いてみる。
彼女は「そうだよ、そう!」とすぐさま頷いた。
「転校生だって!しかもイケメンの男子って話!」
「え、この時期に転校生かぁ。珍しいところに来たね」
「ちょっとそこじゃないでしょ!イケメンってとこに反応しなさい」
「あ、そうだね」
もうー鈍いなーと友達は苦笑する。ミーハーな友人をみてそういう情報は彼女らしいと笑った。
ゆうさはというとイマイチ「イケメン」というものにピンとこない、そんな子だった。
しばらく話していると担任の先生が教室へと入り、いつものように生徒に座るように叱咤した。クラスが着席した頃、先生の後についてくる生徒が一人入ってくる。
「もう、知ってると思うが転校生を紹介する」
そう言うと皆が転校生に注目した。ゆうさも例外なく視線をうつした。
「花京院典明くんだ、2年の途中からだから制服がそのままだが勘弁してやれよ」
そういうと、花京院は優雅な動きでお辞儀をした。それはこの少しゆるい学校には似合わない仕草で、いいところの学校にいってたんだろうと皆に思わせるものだった。
「よろしく」
にっこりとスマイルをきかせた一言は女子たちを釘付けにさせるものだった。ゆうさもイケメンかもーと思いながらその姿を見ていた。
「んーじゃあの隣、とりあえずそこに座っていてくれ」
ゆうさの隣はもうしばらく学校に来ていない生徒の机だった。先生が片付けたのかは知らないが綺麗になっている。
「わかりました」
スタスタと歩いてゆうさの隣に着席する。周りの女子がきゃーと歓声をあげる中、ゆうさは会釈だけしておいた。
「知らないこと色々聞くかもしれないけどよろしくね」
「うん、よろしく花京院くん」
「君の名前を教えてくれないかな」
「私?空条ゆうさ、ゆうさでいいよ」
んじゃー早速とゆうさは次の授業の教科書を机を寄せつつ取り出した。人見知りのないその行動に花京院は少し驚いたが、すぐにありがとうと微笑み返した。
「ねーねー花京院くん!」
昼休みになって、友達がわらわらと花京院の周りに女子が集まってきた。転校初日に起こる取り囲みだ。花京院はにこやかに対応している。
「ゆうさってばずるい!花京院くんの隣だなんて」
「うんうん、代わって欲しい」
冗談と嫉妬半分で周りの女子たちが次々にそう言う。
「そこは先生に言ってよー!代われるならいくらでも代わるし」
「それはそれでどうよ」
花京院のほうをみると少し苦笑いをしている。
「花京院くん、この子ちょっと変わってるだけだから、今のは酷い意味じゃないのよ」
あっけらかんとしたゆうさの性格に、周りの女子のほうがフォローする。
「まぁ従兄にあんなイケメン先輩がいるから相当鈍ってるだけなんだろうけど」
「はいはい、その話はもう飽きたよー」
ゆうさが呆れた顔をする。花京院はそんな彼女の姿をみて、皆に好かれているからこそだなと思った。
「クラス仲がいいんだね」
「んーっていうかゆうさがほっとけない妹みたいな?」
「それにゆうさのバックが怖い怖い」
言えてるーと女子たちが笑った。
花京院はそのバックと言うのが先ほどの従兄のことなんだろうとぼんやりと考えていた。
「ゆうさは怒らせないようにするよ」
「ほら、皆が変なこと言うから花京院くんまで言い出した」
「あはは、気をつけなさいよー」
どっと笑いが起こる。転校初日でこんなおかしく笑うことができるなんてと、花京院はゆうさとその女子達に安心した。
放課後、女子の取り囲みが少なくなった為か男子もちらほらと花京院と会話してるのがみえた。ゆうさは転校したことがある為、花京院が周りに溶け込めているのをみて安堵する。
(んーじゃあ帰ろうかな)
特に部活にも入っていないゆうさは家へと帰っていった。
「でねーイケメンの男子が転校してきたんだよ」
「まぁ!ゆうさちゃん羨ましい!」
「やれやれだぜ…」
空条家の食卓では叔母の聖子ことホリィと従兄の承太郎が一緒に席を囲んでいた。ホリィはおっとりとした美人顏でゆうさの話に楽しそうに笑っている。一方従兄の承太郎は仏頂ズラで話しだけは聞いていた。
「そういえば承太郎のせいでまたからかわれたんだからね!不良はもう卒業してよ!」
ホリィさんも安心できるしーなんて言って二人で笑う。
「やだね」
と一言だけつぶやくと承太郎は黙々とご飯を食べていた。
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