ジョジョ(スタプラ・承太郎etc)

□透明に近いブルー
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おまけ





高校を卒業し大学へ進んだ彼は、今アメリカへと拠点を移していた。
未だ未知の世界と言われる海洋学に日々を追われ、専門家との交流で切磋琢磨しながら充実した日々を送っている。
黒い学ランから白い白衣に変え、それに合わせた白い帽子が特徴的だ。
ほぼ毎日眺める海の色を見ながら、時々あの日のことを思い出してみたりするのであった。









「ジョータロー、今夜のパーティはどうだい?」

研究仲間が毎月開催するパーティに今日も誘われる。
正直海をみているほうが楽しいのだが毎回断るのも付き合いがないと言われ、渋々承諾したのが先週だ。

「やはり疲れるな」
「お前が来ると女性が悲鳴をあげて倒れるからな」

冗談めかした皮肉だ。
承太郎の端正な顔はパーティに来る女の的だった。
静かなのを好む承太郎は壁の華と化していたが、こちらの女性には通用しないらしい。

「今夜は大きなパーティなんだ。お前もパートナーを作れば叫びもやむさ」

そう言って去っていく友人を見つめながら承太郎はビールが入ったグラスを傾けていた。
パートナーと言われて女性をチラッとみやる。
視線を投げかけられた女たちは気があるのかと近づいて来るが、面倒になりその場を立ち去る。

もっと人のいないところは無いかと散策していると、会場の屋上へと突き当たった。
パーティで盛り上がっている皆を眺めながら柵に持たれかかる。

庭を覗くとキラリと何かが光った。
不思議に思い目をこらすと、六つのガラス板が庭と彼の間に時々場所変え現れる。

「どこだ…?」

仕掛けの元を探そうとする。
しかし庭には人がいるだけで浮かした糸も無い。
他の人間は気にしていない様子だ。
承太郎は冷静に考えながらそのガラスを目で追う。
不規則に動いているように見えるガラスもよく見ればある一点に光を送っているようだった。

「……ッ」

何かに気づいて屋上から駆け下りる。
庭の一点に見えたのは楽しそうに笑う男女の姿だった。



「ゆうさッ」



名前を呼ばれて女性は振り返った。



「承太郎…?」



それは紛れもなくゆうさで、最後に出会った頃となんら変わらぬ姿で承太郎を見つめた。
白いスラッとしたロングスカートがよく似合っている。
そして隣に立つ男性は変な前髪の男だった。

「こんなところで会うなんて!こっちにいるの?全然知らなかったわ!」

久しぶりに会えた承太郎に親しみを持って抱きしめる。
承太郎は抱きしめ返し頬にキスをすると同じように微目元を細めた。

「典明君、紹介するわ。日本でお世話になった空条承太郎よ」

そう言われて視線を男に移すと顔の整った優しい表情をした男が前にでる。

「花京院典明です。大学でエンジニアの勉強をしています。よろしく」

手を差し出され握手をする。
その手に指輪はなく承太郎は少し安心する。

「空条だ。海洋学を研究している」
「すごい!カッコいいですね!」

その言葉に嫌味はなく純粋に驚き尊敬しているようであった。

「ゆうさはなぜここに」
「彼に誘われたの。一人だと居づらいんですって…」
「そこは言わなくていいだろう」

親しく話す2人に承太郎は少し嫉妬した。
この男があの時の男だと気づいていないとでも思っているのだろうか。
内緒、と言われたあの時を思い出す。

「さて、僕はもう帰ろうかな。片付けなきゃいけない課題がたまってるし」
「エンジニアには休みが無いわね」
「辛いところだ」

やれやれと手を大げさに上げると花京院は、じゃあと言って去っていった。
承太郎は去っていく男の背中を見つめる。

「ゲーム開発に携わってるらしくて、大変ね」
「ほう…、ところで」
「なに?」
「ちょっとこっちにこい」

ゆうさの手を引っ張り屋上へと歩いていく。
彼女はは何も言わないまま黙ってその手に引かれていた。
まだ誰も来ていないらしい。
屋上に着くとさっきの柵にもたれかかる。
ゆうさも側に立った。



「あれから5年、何していたんだ?」
「私は翻訳の仕事で自由気ままに生きているわ。音声テープから各国の言葉に変えて伝えたり、絵本とかね」

楽しいのよ、と笑う。
本当に楽しいのか色々な出来事を話しだす。
しかし、肝心な部分がまだ聞けない。
もどかしてくてつい自分から聞いてしまった。

「仕事は順調のようだな。プライベートはどうなんだ?」
「残念だけど独り」

彼女はあっさりといった。

「あいつは?」
「典明君は友達よ。すんごく可愛いのよ、彼ったらお酒が弱くてすぐ寝ちゃう」

話を聞いているだけだが、彼女の想い人にはなれなかったらしい。
まるで弟を可愛がる姉のような口ぶりに承太郎は安心した。

「ゆうさはひどい女だな」
「そうね、典明君がいないところでこんなこと言って」

口を両手で塞ぐ。
こんな仕草がゆうさだと可愛く見える。
ずっと見て居たくもなるが承太郎はゴホンと咳払いをした。

「5年前、見える見えないって話をして居ただろう」

ゆうさの表情が少しくもる。

「…えぇ、そうだったわね」

今でもこの話は話題に出したくないのだろう。
しかし、承太郎は頭上に浮いている6枚のうちの一枚を指差し、彼女に問う。

「見えないってのは、あれのことだったのか」

それは疑問ではなく、確信を持った言葉だった。

「じょ、承太郎…」
「まぁ見えづらくはあるな」

一変に驚きへと変わる。
ゆうさは承太郎の目を見つめ、彼の見ているガラスの板を見上げた。

「やっと、俺にも見えたな」

承太郎がゆうさに視線を移す。
彼女は泣いていた。
しかし、それは悲しいからではなかった。
それがわかっているのか承太郎は優しく笑いながらゆうさの頭を撫で抱きしめる。

「なぁ俺は花火の日、ゆうさに一度告白しているんだ」
「…知って…いたわ…」
「でもゆうさは俺の肩に寄り添っただけだった」
「ええ…」
「なら、今も同じことをするのか」

耳元で囁かれた言葉にゆうさは首を横に振った。
顔を見上げ涙を拭うと承太郎を見つめた。

「私の目はもう見えないわ。その代わりあれが私の目なの。あの光に映ることならなんでもわかる」

そういうことか、と夏の日の謎が解けていく。

「俺はあの後こいつが現れてな。色々大変だったぜ」

すると、彼から人型の青年が現れる。
古代の武闘家を思わせる格好で彼のそばで髪を揺らしている。

「承太郎らしいわ」

驚きもせずソレをみて微笑んだ。

「さっきの彼も私たちと同じで、色々苦労をしたみたい。承太郎ならいい友人になれるわ」
「…その話はまたな。今はゆうさのことだけを知りたい」

彼女の肩に顔を埋め、もう手放さないようにと強く抱きしめる。
ゆっくりと顔を上げるとゆうさの唇に触れた。
彼女も静かに瞼を閉じたまま、それを受け入れる。
もう何もかも悩む必要はないと承太郎は安堵する。

「このあと予定はあるのか」
「いいえ 」
「長かったからな、今日はずっとそばにいたい」

そしてもう一度口づけを交わした。
空色の瞳の中に承太郎を映しながら。









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