エリアラ-1
□【君を迎えに/3】
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それから二人は、エリックの土産話を聞きながら紅茶を飲んだ。
やがて、夜も更けた頃、アランが席を立つ。
「じゃあエリック、そろそろ帰るよ」
「…まだ良いだろ」
エリックも立ち上がり、背を向けようとするアランの腕を掴む。
「…明日、また来るよ…。っ!」
掴まれた腕がぐいと引っ張られ、目の前が暗くなった。と、思ったのは、逞しい胸に抱きこまれていたからだった。突然の事に、呆然とされるがままになり、やがて鼓動が早くなるのが自分でも分かった。
(エリック…!)
耳に押し当てられたエリックの左胸から、自分と同じくらいの早鐘が聞こえてくる。
「…エリック。帰らなくちゃ。離してくれ…」
その言葉は、余計にエリックの腕に力を込めさせただけだった。そして気付く。アランの後頭部に添えられたエリックの両手が、カタカタと震えている事に。
「アラン……恐いんだ。死ぬのは恐い…」
そこまで言って、皮肉げに鼻で笑った。
「それに…たった三日前に会ったアラン…アンタと、別れるのが辛いと思っちまうんだ…変だな俺…」
泣きながら笑う。
「…変じゃないさ。俺も、君がいない事に慣れるまで、二十年かかった…」
アランは、優しくエリックの髪を撫でる。
「君が眠るまで側にいるよ。だから、もう眠るんだ…」
抱きしめたまま、ベッドに移動させ腰掛けさせる。アランの肩に、頭を埋めて泣く後ろ髪を撫で付けながら、アランはエリックを優しくベッドに押し倒した。
「行かないでくれアラン…一緒にいてくれ」
アランは、エリックの涙を、革手袋を外し拭ってやる。
「『眠れ』…」
アランが耳元で唄うように囁くと、エリックは催眠術にかかったように、新緑色の瞳を半眼にさせ、とろりと眠りの淵に落ちた。
「アラン…」
呟くと、完全に瞳を閉じて寝息を立てる。アランはベッドを抜け出すと、エリックの布団を整えた。その頬に、涙の筋が光っている。親指でそれを辿ると、アランはエリックのアパートを立ち去った。
Continued.