エリアラ-1

□【千の魂を狩った死神】
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たったひとり、死神を遠くから見ているだけの、ブラウンの髪の美しい死神がいました。

死神は、その死神の側に行って、

「俺は、千も魂を狩ったんだぜ!」

と言いました。

ブラウンの髪の死神は、哀しそうな表情で、

「そう」

と言ったきりでした。

死神は、少し腹を立てました。

何しろ、自分が大好きでしたからね。

次の日も、次の日も、死神は、ブラウンの髪の死神の所に行って、言いました。

「お前はまだ、千も魂を狩った事はないんだろ」

ブラウンの髪の死神は、

「そう」

と言ったきりでした。



ある日、死神は、ブラウンの髪の死神の前で、華麗にデスサイズを振り回して見せて、言いました。

「俺、穢れのない魂ばかりを狩ったんだぜ!」

ブラウンの髪の死神は、やっぱり哀しそうな表情で、

「そう」

と言ったきりでした。

「俺は、千も魂を…」

と言いかけて、死神は、

「側に…いても、良いか?」

と、ブラウンの髪の死神に尋ねました。

「うん」

死神は、ブラウンの髪の死神の側に、いつまでも、いつまでもいました。



ブラウンの髪の死神と、死神は、一緒に暮らしました。

死神は、もう、

「俺は、千も魂を…」

とは、けっして言いませんでした。

死神は、ブラウンの髪の死神が、自分よりも好きになりました。



ふたりは寄り添って、いつまでも、いつまでも一緒にいようと誓いました。

死神は、永遠の命を、ブラウンの髪の死神と、ずっと過ごしたいと思いました。

初めて微笑んで、死神は言いました。

「やっと見付ける事の出来た…微かな光…」



でもある日、ブラウンの髪の死神は、死神の隣で、静かに動かなくなっていました。

ブラウンの髪の死神は、『死の棘』という病におかされていたのです。

死神は泣きました。

夜になって、朝になって、また夜になって、朝になって、死神は千回も泣きました。

朝になって、夜になって、ある日のお昼に、死神は泣きやみました。

死神は、腕の中の、氷のように冷たくなってしまったブラウンの髪の死神の頬に、一度だけキスして言いました。

「これが…俺の友情」



死神はもう、けっして、穢れのない魂を狩ったりはしませんでした──。


End.



─元ネタ─
佐/野洋子著
『100万回生きたねこ』
※名作絵本です…orz

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