エリアラ-1
□【千の魂を狩った死神】
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千も魂を狩った死神がいました。
デスサイズはノコギリ型で、ブロンドにコーンロウがトレードマークの、立派な死神でした。
千の人間がその死神に命を奪われ、微笑むように死んでゆきました。
でも死神は、一回も笑いませんでした。
ある時、死神は、レース編み同好会の貴婦人たちの、魂を狩りました。
貴婦人たちは、よく晴れた暖かい日に、公園の芝生の上で、レースを編むのが好きでした。
死神は、楽しそうに談笑する彼女たちに、話しかけました。
「お嬢さん…。貴方がたの魂、とても素敵だ…。さようなら」
ある時、死神は、悪い貴族に捕らえられた、『雛鳥』たちの魂を狩りました。
「こいつぁ、とんだ極悪人がいたモンだな…」
『雛鳥』たちは泣き叫んで、現れた死神に、必死に助けを求めました。
でも死神は、助けてやる気など、毛頭ありませんでした。
「安心しろ。苦しまず、痛みも与えず、殺してやるから…」
ある時、死神は、殺戮オペラの会場で、たくさんの魂を狩りました。
逃げ惑う人間たちを捕まえ、ひとりひとり、魂を奪っていきました。
死神は、人間の魂を狩る事など、少しも悪いと思っていなかったのです。
どんな死神も、死神の冷酷さを尊敬していました。
ピアスをプレゼントしてくれる死神もいました。
自慢のコーンロウを誉めてくれる死神もいました。
デスサイズをピカピカに磨いてくれる死神もいました。
でも死神は言いました。
「俺は、千も魂を狩ったんだぜ。今更おっかしくって!」
死神は、誰よりも自分が好きだったのです。