小話纏め-4

□【恋人なのにサンタクロース】
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今日はたまたま、アランが休みだった。昨夜何度も『クリスマスプレゼント』を強請ったせいか、いつも見送ってくれる筈のアランは今朝、まだぐったりと夢の中にいた。

起こすのが忍びなくて、そっとベッドを抜け出し派遣協会に出勤して、定時で上がって帰ってきても、アランはまだ寝乱れたベッドの中で寝息を立てていた。

昨夜のディナーは腕を奮ったが、今日は帰りにデパートに寄って、イヴの売れ残りのオードブルとホールケーキを買ってきた。家計にも気を配るアランへの気遣いだったが…。

俺は、買い物袋をテーブルに置き、ベッドの中のアランの顔を覗き見る。その美貌は、2015年前に処女でありながら聖人を出産した聖母のように、穢れなく健康な美に満ちていた。

「アラン…」

俺は思わず呟いて、その寝顔にそっとキスを贈った。イヴにスノーボールをプレゼントとして贈っていたが、この気持ちはそんなものくらいじゃ表せない。

「ん…」

小さくアランが身じろぐ。

「エリック…?」

よほど眠いのか、瞼が開かない様子だが、誰何が上がる。

「…いや。サンタクロースだ」

俺は含み笑ってもう一度、その頬にキスを落とす。アランも瞳を閉じたまま、柔らかに微笑んだ。

「随分遅刻のサンタクロースだな…クリスマスイヴは昨日だぞ」

「忘れ物をしたんだ」

「ん…何?」

俺は寝ぼけまなこを擦るアランの手を取って、それを握らせた。

「…んん?」

アランがようやくその綺麗なライムグリーンの瞳に像を結ぶ。しばしあって、驚きにその睫毛の長い輪郭が見開かれた。

「エリック…これ…!」

小さな小さな輝きを、零さないよう、アランが慌てて両手で包み込んだ。そこには、1カラットはあろうかというダイアモンドの粒が乗っていた。

「リングにしても、ペンダントにしても、ピアスにしても良いようにと思ってな」

俺は、寝癖のついたアランのブラウンの髪を撫で付けてやりながら、その表情が驚きから喜びに変わっていくのを見守っていた。恋人にダイアモンドを渡すのは、プロポーズの印だ。

「何にする?」

「良いの…?」

「ああ。返品はきかねぇから、覚悟しろ」

尊大に言い放つと、アランがプッと噴き出した。その光を反射して七色に輝く宝石を親指と人差し指で挟んでそうっと電灯にかざし見ながら、嬉しそうに言う。

「じゃあ、ピアスにする。ここなら、エリックにしか見られないから」

アランは、へそにピアスをしていた。確かに、そこなら俺以外が見る事はないだろう。

「ありがとう、エリック…!」

「ああ。…will you marry me?」

また盛大に、アランが噴き出した。

「順番が逆だよ!エリック!!」

そう言って、俺に抱きついてくる。プロポーズの返事は、今夜、ピロートークで聞かせて貰う事にしよう。また順番が逆だって、可愛く怒られるんだろうけどな。

End.

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