小話纏め-1

□【もっと】
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最近、犬を飼い始めた。ロングコートチワワだ。

「あれ?エリックさん、可愛いワンちゃんですね」

アランがデスクに置いてあった俺の携帯の待ち受け画面を、ふと覗き込む。

「ああ、飼い始めたんだ。やっぱ可愛いか?」

相好を崩す俺に、アランが笑った。

「ええ。エリックさんも、親ばかになっちゃうタイプなんですね。意外です。何て名前ですか?」

「ア…アンディ」

若干どもりながら答える。俺の動悸には気付かぬようで、アランはその名を繰り返した。

「俺、犬すきなんですよ。今度会いに行っても良いですか?」

「え…?俺んち来るのか?」

「あ、すみません。図々しいですよね…」

「いや、ぜひとも来いよ!」

思わず勢い込んで言うと、

「あ…はい。ありがとうございます。嬉しいです」

アランはちょっと驚いたように目を見張ったが、すぐに華開くように微笑んだ。

*    *    *

「あっ…あ、あ…イイっ…!」

自室のベッドで、下半身だけ裸の姿で上肢を起こし、立てた両膝の間に埋まる頭を抱え、俺は小一時間も喘がされていた。

ぎゅっと目をつむり、銜え込まれた雄に与えられる激しい舌技に耐える。時々歯を立てられ、

「ひぃっ!ア…アラン、そんなにしたら…またイく…イッちゃう…っ!」

アランは部屋に来ると、「前から好きだった」と告げ、俺のズボンを脱がせすぐに前戯を始めた。もう何回もイカされているが、まだ攻めたりないようだった。

涎と俺の体液がベトベトと滴り落ち、シーツに染みを作る。その液体の後を追うように、アランの巧みな舌が肛門に当たった。

「あぅっ…!」

だが濃い体毛に阻まれ、強い快感は得られない。俺はぐいと腰を突き出し、ねだった。

「アラン…アランもっと、強くっ」

その動きに反応し、アランの舌が中に入ってきた。ギリギリまで追い詰められていた俺は、あっあっ、と大きく腰を使い高みを目指す。

「アラン…!」

絶頂感が襲ってきた。舌がイイ場所に当たるように、腰を激しくグラインドさせる。だがまさにその瞬間、アランはふいと頭を上げた。

「ぁ…離すなっ…アランっ…!!」

一番刺激が欲しい時に突き放され、虚しく精液が空を飛ぶ。その物足りなさに、

「や…ぁ、は…」

思わず、涙声が出た。ひとり腰を動かし射精し続ける俺を、アランはただ黙ってジッと視姦している。やがてそれが終わりを迎えると、きつくつむった俺の瞳から涙がこぼれ落ちた。

肩を上下させ荒く呼吸をし、天を仰いでいた瞼を薄く開ける。涙でぼやけた視界を下げると、まだ俺をジッと見ているアランと目が合った。

「離すなって、言っただろアラン…」

俺はアランの顎に手をかけた。何かを期待して、『アラン』が吠える。「キャン!」と。

そう、本物のアランが訪ねてくるのは明日だった。今までの前戯は全て俺の妄想の産物だ。傍らにはバター。

「アラン…もっとだ…」

俺は自身と『アラン』の要求に応え、再びバターナイフを手に取った。

──終われ!──

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