小話纏め-1
□【死刑囚×刑務官】
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──ぐちゅっ、ずりゅっ…。
この刑務所の刑務官になって永い。だがこの死刑囚用の独房区画が、一部屋以上埋まったのを、私は見た事がない。
「あっあっ、イイッ…もっと…奥にっ…!」
その理由は、ここに収監された死刑囚が皆、極めてスピーディーに──わずか数年で刑を執行されるからだ。
「先輩がこんな淫乱だなんて知らなかったっス…知ってたら、あんな事、しなくて済んだのに」
『あんな事』。それは、私に言い寄る男たちを、私を『先輩』と呼ぶこの男──後輩刑務官ロナルド・ノックスが、次々と惨殺したのだ。犯行は明るみになり、当然ロナルド・ノックスには死刑判決がおりた。
私たちの間は、冷たい鉄格子が分けていた。
「指じゃ、これ以上奥は無理っスよ…分かるっしょ?先輩」
ロナルド・ノックスが囁き、ひざまずいた私の肛門に入れ掻き混ぜられていた三本の指が、ギリギリまで引き抜かれる。
「ヒッ…ロナルド・ノックス!抜かない…で…くださ…」
私は上手く呼吸が出来ず、口角から涎を垂らしながら哀願する。
「欲しかったら…ね?先輩」
再び恐いほど優しく囁き、指が完全に引き抜かれた。
私は夢中で、腰に下げていた鍵束を取りガクガク震える膝で扉まで這いずり、独房の鍵を開けた。許されぬ行為だった。
ゆっくりと開く鉄格子の扉の先で、爛々と瞳を輝かせ、ロナルド・ノックスが待っていた。私はロナルド・ノックスにこの身を捧げる為、扉を開けたのだ。
「いらっしゃい。先輩」
おそらくこの男が処刑されるまで、毎日毎日、ずっと──。
End.