トモコレ-2

□【トモコレ日記:45】
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髭を整え終えるとメンバーたちに電話をかけ、アンダーテイカーのデビューの条件を伝える。運良く三人全員と電話が繋がった。

ウィリアムさんは冷静に『女王の番犬』の事を聞き、グレルはすでに勝った気でハシャぎ、ロナルドは現実的に作戦を練った。

『そいつらって、二十代の男と子供なんスよね?』

「ああ。歌は聞いてないから何とも言えねぇが、ルックスは折り紙付きだ」

『エリック先輩がそう言うって事は、相当なんすスね…。俺、負けないっス!』

自分たち──特に自分──のルックスに自信のあるロナルドは、声を大にして張り合う。俺は小さく笑った。

「まあでも、ヴォーカルの坊ちゃんとは歳が全然違うから、後は好みだろうな」

各自持ち味を磨こう、と建設的な意見を交わし、俺たちは電話を終えた。

そして、また曲を作る。最初のライヴまで一週間、ベストを尽くす為に、出来るだけ多くの曲を作りたい。幸い、アランとの生活から沢山のイマジネーションを得て、頭の中では メロディーがひしめき合っていた。それを譜面に落としていく。

食を忘れて曲作りをしていたら、朝番のアランが昼過ぎに帰ってきた。スーパーのビニール袋を手にして。

「ただいま、エリック」

「おう、おかえり。いつもより早かったな」

ソファの周りに散らばる譜面を見て、アランは笑った。

「いつも通りだよ。エリックが曲作ってたから、早く感じただけだ。お昼、食べてないだろ」

「ああ、そう言えば」

「バンドの事も大事だけど、身体壊さないようにしてくれよ、エリック」

キッチンに食材を置いてきたアランが、散らばった譜面を拾って歩いて、整頓してくれる。俺は礼を言って、一息つく事にした。

「飯は何だ?」

ソファの隣にくっついてくるアランにバードキスをして、ブラウンの髪を撫でる。

「サイコロステーキ。栄養つけなきゃと思って」

「イエス!」

俺は指を一つ鳴らして寿いだ。好物が、肉だったからだ。そんなアランの気遣いが嬉しくて、きゅっとアランを抱き締める。

「そんなに嬉しい?安上がりだな、エリックは」

アランの首元に頭を埋める俺に、アランがくすぐったそうに笑った。

「さ、ご飯食べよ」

アランは、自分は賄いで食べたから、と、俺に肉を焼いてくれる。野菜サラダもたっぷりと。ホント言うと、野菜はあんまり好きじゃねぇんだけどな…。身体の為に、と出されるものを残す訳にもいかない。食べ終わると、すかさずアランが片付けてくれた。

「アラン、聞いてくれねぇか」

俺たちはソファに座って、俺がギターを握り、自信のある一曲をかき鳴らす。グラムロック調のその曲を、アランは足で小さくリズムを取って聞いていた。

「どうだ?」

「凄いよエリック…!何て言うか…色っぽい」

その言葉に、俺は唇の端を上げた。アランがそう感じるのも無理もない。

「『あの時』に頭ん中で鳴ってた曲だからな」

「え?」

俺の言葉の意味が分からず、数瞬ポカンとしていたアランだが、にっと僅かに歯を見せると、すぐに理解して髪の毛一筋の先まで淡く染めた。

「エリック…!」

非難したそうに声を上げるが、どう話したら良いものかと、言葉を喉につかえさせたまま、口をパクパクさせる。俺はまたひとつ笑った。

「安心しろアラン、誰にも言わなければ分かんねぇんだから」

「そうだけど…恥ずかしいよ」

ポソポソと呟くアランの頭を、ポンポンと撫でる。

「俺のインスピレーションは、お前だ、アラン。いつも隣で輝いていてくれ」

顔を淡く染めたまま、アランはちょっと笑った。

「気障なんだから…」

「さ、風呂に入って気持ちよくなろう」

今宵も、スローセックスする気満々で、俺はギターの代わりにアランの身体をかき抱いた。

End.

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