トモコレ-2
□【トモコレ日記:43プラス】
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『女王の番犬』の二人は、アンダーテイカーに紹介されると、セバスチャンが改まって、
「よろしくお願いします」
と胸に手を当てた。シエルの方は、すでに挨拶は済ませたとばかり、相変わらず仏頂面だったが。
「アンダーテイカー、どういうつもりだ?」
「言った通りだよぉ。小生がプロデュースするのは、どちらか一組だけ。忙しいのは好きじゃないからねぇ」
「アンダーテイカー。ひょっとして、引退したのも忙しくなったからですか?」
彼のファンだったアランが、思わず聞くと、アンダーテイカーは薄い唇で微笑んだ。
「ギターくんは大胆な事を言うねぇ。でも…その通りだよ、ヒッヒッ…」
「そんな…あんなに人気だったのに…」
アンダーテイカーは、黒いマニキュアを施した人差し指を一本立てた。
「小生は、音楽が好きなだけさ。名声に興味はないんだよぉ」
逸れだした話を、俺が元に戻す。
「具体的に、どうやって決めるんだ?」
「ベースくんは、流石リーダーだけあって、現実的だねぇ」
一人うんうんと頷くと、本題に入った。
話はこうだった。アンダーテイカーの名前は出さずに五ヶ所のライヴハウスでそれぞれ対バンをおこない、客に投票させ、武道館でデビューする一組を決めるという。アンダーテイカーのプロデュースとあれば、いきなり武道館デビューでも、十二分に客が入るだろう。むしろ狭いかもしれない。
計らずも、ロナルドが言った「武道館を埋める」という言葉が、現実味のある果実となって、目の前にぶら下がっていた。このチャンスを逃すには惜しく、他のメンバーもそうだろうと踏み、アンダーテイカーの言われるままの日程を飲む。バイトなんぞ、クビになったって構わねぇ。
そうして俺たちは、夢幻かと思われる時間を過ごして、帰路に着いた。今まで俺に着いてきていた形のアランだったが、俄然やる気を出して語った。
「エリック、アンダーテイカーのプロデュースでデビュー出来るなら、俺、もっと頑張るよ。曲つくるんだろう?俺サポートするから、エリックはそっちに集中して」
「おう。サンキュ、アラン」
頬を上気させて早口に言うと、いそいそとキッチンへ向かう。さっそく飯を作る気なのだろう。
だが俺は、アランの手を握ってひきとめた。降ってわいたような好機に、俗にいう「胸がいっぱい」で、不思議と腹は減っていなかった。
「エリック?」
「アラン」
「何?」
小首を傾げる様が、愛らしい。
「お前は飯食ったのか」
「あ、うん。賄いで食べてきた」
「俺も腹は減ってねぇ。曲は、明日から作る…アラン」
不思議そうに、アランは俺に向き直った。昨夜の痴態が目の前にチラついて、目眩がする。俺は堪らず、欲望を音に乗せた。
「アラン…スローセックスしようぜ」
「えっ…」