小話纏め-3
□【アイスキャンディ】
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休暇に、俺たちは海に来ていた。パラソルの下に寝転び心地良さそうに瞳を閉じているアランの頬に、俺は買ってきた棒つきアイスキャンディをひたりと触れさせる。
「ひゃっ」
思惑通り、驚いた声が上がる。見開かれた瞳に俺の差し出すアイスキャンディが映り、アランは少し笑った。
「ほらよ」
「ありがとエリック。でも、悪戯しないでくれよな」
「お前の可愛い声が聞きたくってよ」
「もう…」
アイスキャンディを受け取ると、アランは寝転んだままぺろぺろと舐め始めた。俺は隣に座り、かぶり付いてサクサクと咀嚼したから、あっという間に食べ終わってしまったが、アランはと見下ろすと、まだ舐めていた。
遠慮がちに舐めとる度に、アランの紅い舌がチロリと覗く。高い気温に溶け出したアイスキャンディが、アランの持つ手やしなやかな胸筋に滴って砂に伝っていた。しかも俺が買ってきたのは、よりによってミルクアイスだ。
何だこれ…!エロ過ぎる!他の奴らにゃ見せられねぇ!
俺は慌てて提案した。
「アラン、溶けちまうから、さっさと食っちまえよ」
「んー、こう?」
アランは俺の言葉に、今度はアイスキャンディをすっぽりと口内に含んで見上げてくる。だがアランは噛むという事をせず、口に含んだまま内部で舌を使う。溶けたアイスとアランの唾液とが混ざりあって、白濁が胸筋の間を伝い、唇や身体がべたべたと汚れていた。
「そうじゃなくて、頼むからかじって食っちまってくれ」
「だってこの方が美味しいんだもん」
気温とは別に、火照り始める体温を感じて、俺は強行手段に出る事にした。寝転ぶアランに上から顔を近付け、ニヤリと笑む。
「じゃあ今夜、俺のアイスキャンディも舐めてくれるか?」
一瞬ポカンとしたアランだったが、すぐにその意味を悟って、頬張っていたそれを口から出した。
「エリック!」
「お前が色っぽ過ぎるのが悪い」
そう言ってアランの手から、アイスキャンディを取り上げてしまう。
「さ、海に入ってその汚れを落とせ。さもないと、ここで襲っちまうぞ」
「エリックのえっち…」
「馬鹿、お前が鈍感過ぎなんだ。俺以外の前で、アイスキャンディ食うの禁止な」
「えーっ」
波打ち際で、波しぶきに隠して俺は睦言を囁いた。不満そうにアランが声を上げたが、その頬はまんざらでもなく仄かに桜色に染まっていた。
End.