その他CP-2

□【病める時も健やかなる時も】
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昨日も合コンだった。人の金で呑み食いし、おまけに女までつまめるとは、ロナルドの合コンも悪くない。エリックは、そんな事を考えていた。

「エリックさん、コーヒーいかがです?」

死神派遣協会、回収課。昼下がりの眠くなってくる時刻、デスクで伸びをしながら大欠伸をしていたエリックに、横からスッとカップが差し出される。アランだ。

「お、アラン。ちょうど眠かったトコなんだ。サンキュ」

デスクの横に立つアランに向かい、椅子に座ったエリックは仰け反るようにして彼の顔を見上げ、ニカッと笑って礼を言った。日に焼けた健康的な首筋がもろにアランの眼下に晒されて、アランは思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

だがそれと同時に、紅く淡く浮くキスマークも目に飛び込んでくる。

「…アラン?」

「あ、いえ!ついでですから」

放心したように見入っているアランの頬に、下からふと触れてくるエリックの掌に気付き、アランは慌てて身を引いた。本当は、ずっと触れていたかったけれど。これから自分がするであろう計画を考えると、今更少しだけ後ろめたくて気が引けた。少しだけ。

革手袋越しにだが、それでも触れられた頬がジンジンと熱を持って熱い。アランにとっては顔が赤くなるほどの出来事だったが、エリックにとってはちょっとしたスキンシップだった。それは、アランにも分かっている。それが悲しくて、ひとり熱の上がる頬を隠したくて、ふいときびすを返した。

「それじゃ」

「あ、おいアラン…」

休憩ついで、サボりついでに彼と雑談でもしようと思っていたエリックは、物足りなさそうに追いすがったが、アランは聞こえなかった風に行ってしまう。常ならばそんな事はないのに、とエリックは若干いぶかしみながらも、コーヒーに口を付けた。


その五分前。


──サラサラ…。

給湯室の片隅で、茶色い液体に白い顆粒が投じられ、スプーンで跡形もなくかき混ぜられる。

「ふふ…ふ…」

電気も点けず、薄暗い中でアランは楽しげに瞳だけを輝かせて笑っていた。

「君が悪いんだ…。エリック、君が。合コンなんかに通って…。汚らしい女なんかを抱いて。もう、こうするしか、ないじゃないか…」
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