エリアラ-1

□【君を迎えに/0】
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「アラン・ハンフリーズ。夕食です」

死神派遣協会内の、必要最低限の家具が備え付けられただけの無機質な一室。ドアが開き、食事のトレイを持ったウィリアムが入ってくる。普段は管理課の新人、極たまに話し相手として回収課の死神が運んでくるくらいだったから、アランは驚いて座っていた椅子から立ち上がった。

「ウィリアムさん」

「かしこまる必要はありません。食事をとりなさい」

トレイをテーブルに置かれ、アランは戸惑いながらも、いただきます、と食事に口を付けた。

*    *    *

その頃、モニタールームではグレルとロナルドがジッと画面を見つめていた。ウィリアムとアランが映っている。

「大丈夫かしら、アラン…」

「エリック先輩が亡くなってから、もう20年ッスもんね」

エリックは、千の魂を回収しなかった罪で死んだ。アランは、それに巻き込まれただけ、またリストに名前がなかった事、回収課の有能な人材不足などの観点から、シネマティックレコードの審査の結果、生き残った。

だが目を覚ましたアランは、己のデスサイズで自ら命を断とうとしたのだ。よって死神派遣協会内で、軟禁状態で見張られる事になったのだった。長寿の死神にとって20年という歳月はそう長くはない。しかし、ただ一人を想って過ごす20年間は、どうだろう。

「デスサイズを渡すのは、まだ早いんじゃないかしら」

「でも、対象者がアレですよ。今しか、アラン先輩が立ち直るチャンスはないッスよ」

まるでこちらの話声がモニターの向こうに聞こえてしまわないように、囁き交わす。四角く切り取られた景色の向こうでは、アランが食事を終えた所だった。

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