エリアラ-1
□【テイクアウトお願いします】
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パブのテーブルでは、思い思いに若い男女が会話を始めていた。俺はと言えば、隣に座ったエリックと二人で話していた。
いつものようにロナルドに誘われたのをエリックが肩代わりしてくれようとしたが、俺が行く、と言い張った所、結局二人そろって来る事になったのだ。おかげで、男性の頭数が一人余っている。もっとも、この合コンを企画した張本人のロナルドがまだ来ていないので、ちょうど二人余っているのだが。
と、その時、エリックの携帯が鳴った。二言三言交わし、スーツの内ポケットにしまう。
「なんかロナルド、急用で来られないってよ」
「え?ロナルドに、合コン以上に大事な用なんて有ったのか?」
顔を見合わせて笑う。ロナルドには悪いが、ちょうど良かった。このまま、エリックだけと話していたい。この合コンを引き受けたのだって、エリックに夜遊びして欲しくなかったからだ。
「アラン、お前弱いんだからあんま呑むなよ」
諭すように言われ、思わず俺も言い返す。
「君だって、強いからって呑み過ぎるなよ。休日を二日酔いで潰したくないだろ」
「ざーんねん。俺は生まれてこの方、二日酔いになった事がない」
至近距離で、エリックが俺に向かってウインクする。ギクリ、とした。胸の鼓動がエリックにも聞こえてしまいそうで。動揺は隠して悔しがってみせる。
「俺なんか三杯が限界なのに」
「おいお前、グラス半分でもう酔ったか?顔赤いぞ」
「酔ってない」
「おうおう。酔っ払いは大抵、酔ってないって言うんだよな」
エリックが笑いを噛み殺しながら言う。
エリック、君がウインクなんかするからだ。冗談でも、言えたらどんなに楽か。だけど、もう冗談にするには遅すぎて。