エリアラ-1
□【おやすみを言おう】
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「おやすみなさい、エリック」
「ああ、おやすみアラン」
付き合い始めてから、エリックは毎晩、アランをアパートまで送り届けるのが日常になっていた。その後、彼の部屋で熱い紅茶を一杯飲みながら、2人で他愛もない話をする。至福の時だ。
そして、最初の台詞となる訳だった。帰り際の玄関で、2人は身長差を埋める為お互いに寄り添いあい口付ける。
軽く触れ合うだけの、小鳥がついばむようなバードキス。わざとチュ、と音を立ててやると、アランは離れた後エリックを見て、やや恥ずかしそうに、だが幸せそうに微笑んだ。
「おやすみなさい、エリック」
「ああ、おやすみアラン」
そう言ってエリックは帰路に着く。道すがら、彼は数日前に初めて、アランとキスした時の事を思い出していた。
* * *
アランはしっかりと目を閉じ、よく見れば小刻みに震えている。男性経験が初めてだからか、恋愛経験自体が少ないからか─その両方か。
エリックは革手袋の両手で包むようにアランの顎をすくい上げ、上向かせると、緊張をほどくようにまずは額に口付けた。額、頬、鼻、顎、耳──。顔色をうかがうと、気持ち良いのか、だいぶリラックスした様子だった。
満を持して、唇に向かう。角度を変えて幾度か触れ合い。
(…ん?)