エリアラ-1

□【おやすみを言おう】
1ページ/12ページ

「おやすみなさい、エリック」

「ああ、おやすみアラン」

付き合い始めてから、エリックは毎晩、アランをアパートまで送り届けるのが日常になっていた。その後、彼の部屋で熱い紅茶を一杯飲みながら、2人で他愛もない話をする。至福の時だ。

そして、最初の台詞となる訳だった。帰り際の玄関で、2人は身長差を埋める為お互いに寄り添いあい口付ける。

軽く触れ合うだけの、小鳥がついばむようなバードキス。わざとチュ、と音を立ててやると、アランは離れた後エリックを見て、やや恥ずかしそうに、だが幸せそうに微笑んだ。

「おやすみなさい、エリック」

「ああ、おやすみアラン」

そう言ってエリックは帰路に着く。道すがら、彼は数日前に初めて、アランとキスした時の事を思い出していた。

*    *    *

アランはしっかりと目を閉じ、よく見れば小刻みに震えている。男性経験が初めてだからか、恋愛経験自体が少ないからか─その両方か。

エリックは革手袋の両手で包むようにアランの顎をすくい上げ、上向かせると、緊張をほどくようにまずは額に口付けた。額、頬、鼻、顎、耳──。顔色をうかがうと、気持ち良いのか、だいぶリラックスした様子だった。

満を持して、唇に向かう。角度を変えて幾度か触れ合い。

(…ん?)

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ