エリアラ-1

□【-Side Alan-】
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死神派遣協会、回収課オフィス。ふだん回収課の死神達は、文字通り死亡予定者の魂を『回収』して回っている。だが勿論それらを上に報告する為の、デスクワークも存在する。

夏休みの宿題と一緒で、毎日コツコツとこなしておけば困らずに済むのだが、そうではない死神が、月末の締日になって悲鳴をあげる。

エリック・スリングビー然り──。

「エリックさん…エリックさん、起きてください」

昼間の回収で八面六臂の活躍を見せたエリックは、一転、地味に一ヵ月分の書類の山と戦っていたが、提出期限ギリギリになって睡魔に負け、机に伏していた。それをアランが、遠慮がちに揺り起こす。

頼まれた訳ではないが、帰り道を共にする程の仲になっていたエリックのピンチを見過ごせる筈もなく、アランも一緒に残業と相成った。あとは、エリックの額の下にある、ほぼ出来上がっている一枚を残すのみなのだが。

「エリックさん…」

「…うーん…」

「エリックさんってば」

「…ん…アラン…?」

「そうです。提出期限を過ぎたら、始末書…」

「好きだ…アラン」

「……え?」

見ると、夢かうつつか、エリックは薄く瞳を開けていた。表情を隠すようないつものサングラスはずり上がり、熱っぽい視線が眼球だけでアランを追い掛けている。

ふだん見た事のないカオ。不意に、耳まで熱くなるのを感じながら、生真面目な性格のアランは、何か答えなくては、と思い到った。

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