エリアラ-1

□【-Side Eric-】
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「アラン。そろそろ行くぞ」

いつから、こうしていただろうか。草の生い茂る土手にうずくまり、顔を伏せた仮初めの相棒─それは、『教育係』である以上いつか巣立ってゆくという意味であるが─に、半ばあやすように声をかける。

「ほらもう陽も暮れはじめたし、行くぞ…ってか、立てるか?」

どちらかと言えば物事を強引に進めるタイプのエリックが、言ってしまってから、自分で信じられないと言った風に、密かに天を仰いだ。

肩に担がれたままなのは、ワイルドな風貌に似合いの、ノコギリ型のデスサイズ。そう、2人は先刻、死に際の人間の魂回収という『仕事』を終えたのだった。

「アラーン?」

「は…はいっ。すみません、エリック先輩!」

ずず、とすすり上げる音と僅かに震える指先を残し、アランは立ち上がった。弱々しく微笑んでから、恒例になった謝罪の言葉を、エリックに向かって一生懸命につづる。

ただエリックは、その自分に向けられた、まだ乾ききらない瞳を見ていた。

今まで、『仕事』の対象である死亡予定者に、特別な感情を抱いた事などなかった。だが、アランは。人間達の為に涙を流すのだ。

(純粋過ぎる…そんなんでやっていけるのか、お前は?)

「…輩。エリック先輩。聞いてますか?」

話は聞いていなかったが、レンズごしの濡れた瞳は見つめていた。それがグッと近くなって、下から覗きこんでくる。反射的に、掌で唇を覆ってしまった。何を意識したかがバレバレだ。だが幸いにも、アランはその行動に意味を見出ださなかったらしく、帰りましょう、と土手を上がり始めた。

しかし、長い間座って痺れた脚が草で滑り、滑落しかかってしまう。

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